春が訪れたものの、天候よっては肌寒い日に見舞われる。寒い日に恋しくなるものと言えば「温泉」だろう。冷たい空気と風の中、温泉に入り、体の芯まで温まるのは極上の贅沢だ。今回は温泉を楽しむための「秘境」を紹介したい。
■日本最高所の野天風呂「本沢温泉」
今回紹介する「湯元 本沢温泉(ほんざわおんせん)」は、八ヶ岳の中央エリアにある山小屋だ。通年営業の山小屋で、天狗岳や硫黄岳を目指すハイカーの拠点となる。標高2,150mに位置する場所にある温泉はまさに秘境と言うにふさわしい場所だ。
本沢温泉は2022年に140周年を迎え、多くのハイカーに愛され続けている。筆者もそのひとりだ。 創業当時、長野県茅野市と北東に位置する小海町を結ぶ旧街道の山域に宿はなく、温泉を開拓すれば湯治客も呼べるのではと考え、八ヶ岳で初となる宿をこの場所に建てたのだという。現在は小屋での宿泊だけでなく、テント場も整備されているのでキャンプも可能である。
■簡単には行けない「野天風呂」
無雪期は長野県小海町にある標高約1,600mの「本沢温泉入口」駐車場から目指す。徒歩2時間程度で本沢温泉に到着する。
有雪期であれば、「稲子温泉旅館駐車場」から、みどり池(しらびそ小屋)経由で目指すのがおすすめだ。雪道を3~4時間歩くため、アイゼンなどの雪山装備が必須となる。寒さ対策をしっかりして、秘境の「野天風呂」を目指そう。
本沢温泉までの道中は、歩きやすい樹林帯の登山道が続き道幅も広い。滑落などの危険性はないので、雪山に慣れていない人にもチャレンジしやすいコースと言ってよい。ただし、雪山なので防寒着を身に着け、アイゼンなどの雪山登山に必要とされる装着は必須だ。
長い林の道が続き、時々硫黄岳の姿を確認できる場所を除けば、ほとんど眺望はないため、一気に小屋を目指してしまおう。歩き始めて3時間、ようやく目的地の本沢温泉に到着する。
■秘湯・野天風呂へ! 最高のお風呂と絶景!
日本最高所の野天風呂に入るには、小屋で受付を済ませる必要があり、入浴料は1,000円(税込)。小屋から歩いて10分ほどで、目的の野天風呂が見えてくる。
看板の矢印にしたがって沢沿いを緩やかに下りていくと、ひっそりと野天風呂が現れる。更衣室などはなく、ワイルドな環境の中にあるため入浴の際や着替えには配慮が必要。水着で入ることもできる。協力しながらマナーを守って楽しみたい。
お湯の温度は時期にもよるようだが、41~42℃で外気温が低いため多少熱く感じられ、寒い中温泉を目指し歩いてきた体に染み渡る。硫黄の匂いが心地よく、濁り湯になっているので「ザ・温泉」といった感じだ。
さえぎるものがないので着替えなどは気を使う反面、展望は最高! 晴れていれば湯に浸かりながら硫黄岳を眺めることできる。近くに木の蓋が置いてあるので、温泉を楽しんだあとは浴槽に蓋をすることを忘れないでほしい。
登山口から歩くこと3時間、道中には雪が積もっているので、レジャー感覚で行くことは難しい場所だ。体力に見合った行動を計画し、アイゼンやシェルウエアなど雪山装備をしっかりと整えてほしい。
簡単には行くことができない秘境だが、人生で一度は行く価値のある場所だと感じている。本沢温泉の野天風呂で最高の温泉体験に出かけてみてはどうだろうか。
●湯元 本沢温泉
営業期間:通年
宿泊(小屋):素泊まり8,000円、1泊2食12,000円
宿泊(テント):1名1,000円
入浴料金:野天風呂1,000円、内湯1,000円
●アクセス
中部横断自動車道・八千穂高原ICから八ヶ岳ビューロード(県道480号)経由で43分(22.5km)
https://www.yatsu-honzawaonsen.com/
●【MAP】本沢温泉入口 長野県南佐久郡小海町