■登山の地図読み、歩き方も役に立つのではないか
被災地を見て、災害とは普段、都市インフラに隠れている自然が暴れて、本来の姿を現すものだということを思わされた。その破壊がもたらした荒地を歩くことは、登山中にガレ場を歩くことに似ていると感じた。自然の悪路を歩いた経験があるとないとでは、避難の足取りに差が出るだろう。
道の状況は極めて悪い。今回の地震では、半島の至るところで車道が破壊されて寸断され、自衛隊の車両も初動で被災地に辿り着けないということが起こったそうだ。四輪駆動車といえども道が走れなくなることがあると頭に入れておくべきだ。
登山の経験は、他の点でも大いに役に立つことがあるのではないかと感じた。
例えば、山でGPSアプリを使い、地図を読み、情報収集し、ルートを選択する一連のプロセスは、自治体のハザードマップを読み、災害情報を集め、避難所への安全な経路を探るうえできっと応用させることができるだろう。
七尾市の和倉温泉では津波を警戒して旅館スタッフが宿泊者を裏山に避難させたという話も聞いた。特に高齢の方などには山道がきつかったのではないかと推察される。登山をたしなみ足腰を鍛えていれば、円滑に高所への避難ができることはもちろん、体力の弱い方達をサポートする余力もつけられるし、また自分が年を重ねた時にも趣味として末長く続けていられれば、将来の身を助けることにもつながる。
今回の視察の中では至るところで山肌の崩壊を見た。登山中に地震に遭ったら、まず崖崩れ、土砂崩れが発生しそうな危険箇所は速やかに離れるべきだと、登山者には注意喚起したい。