スキー場のベースにある宿は珍しくない。しかし、リフトやゴンドラで斜面を昇った先、つまりは、“ゲレンデのど真ん中”にある宿は数える程しかない。周囲は360度の雪山の世界。そこでは、特別な夜と朝が待っている。
■豪雪地帯の静かな夜と美しい朝を迎える「和田小屋」(新潟県・かぐらスキー場)
●豪雪ゲレンデのベストポイントに宿泊
かぐらスキー場は、クルマでも新幹線でもアクセスしやすい首都圏日帰り圏内にありながら、約180日の営業が可能な豪雪ゲレンデである。
このスキー場のレイアウトは独特で、駐車場やリフト券売り場、などのある「みつまたステーション」、「田代ステーション」という2つのベースの目の前にコースがあるのではない。その2箇所からそれぞれロープウェーで昇っていった先に白い斜面が広がっているのだ。
また、そこからゲレンデ上部にアクセスするには、さらにリフトやゴンドラを何本も乗り継ぐ必要がある。その移動は、どんどん気分が高揚していく貴重な時間だともいえる。しかし、それを全部省略して、朝イチでいきなりゲレンデにアプローチできる手段がある。
かぐらゴンドラの山頂駅の近くにある山小屋「和田小屋」へ宿泊すればいいのだ。
もともと、スキー場が開業するずっと以前から「和田苗場ヒュッテ」という山小屋があったが、現在の和田小屋は、スキー場が開発される過程でそれが移築されたもの。オープンは1977年。名称は当初の経営者にちなむ。
小屋の表側にはかぐらのメインゲレンデが迫り、裏側には手前に魚沼平野、奥には越後駒ヶ岳、中ノ岳、八海山の越後三山を望む絶景が広がる。
ウインターシーズン、そこに集まるのは、静かな夜と、人とのふれあい、そして、朝イチのパウダースノーを求める人たちだ。
スキー場の営業が終われば周囲は静寂が広がり、温かい小屋のなかではスキー、スノーボードを愛する見知らぬ者同士の会話が弾む。目が覚めれば玄関の外にダイナミックなコースと抜群の雪がスタンバイしている。
基本は山小屋ながら、清潔な寝具が用意され、カーテンで最低限のプライバシーが守られる。男女別のお風呂もある。プリンスホテルが経営しているだけあり、肉類、新鮮な魚の刺身、そして新潟県産のコシヒカリと山小屋のレベルを超えた夕食が用意される。
そのすばらしい環境に魅了される人は多く、リピーター率は極めて高い。
荷物は自分で持っていくスタイルなので、バックパックに部屋着とちょっとした洗面道具などを詰めて泊まりに行きたい。