■自由だけど怖い【お一人様編】
では、お一人様で登ればいいのではないか。実はたまに単独でも登山していた。
お一人様登山はいつ起きて登ってもいいし、辛ければ戻ってもいい。そして何よりも筆者の好きな写真撮影を思う存分堪能できる。限りなく自由なところが魅力の一つだと思う。
ところが、実は筆者は極度の怖がりだった。両面すっぱり切れ落ちたコルを見れば足が震え、行く手の先にサルがいれば前に進めなかった。
ある年の7月、2泊3日の日程で単独入山した南アルプスの椹島から赤石岳、荒川三山縦走の2日目で、コーヒーを飲もうと湯を沸かすときに、コッヘルを忘れたことに気がついた。仕方なくチタン製のカップで沸かしたが、底が二重なので温まる訳がない。熱で変形してしまったコップで、粉が溶けない状態の水っぽいコーヒーを泣く泣く飲んだ。
その日はひどい1日だった。コッヘルの後は雪渓が怖くてストックを1本落とし、さらに荒川前岳では疲れと、気持ちよさで気づいたらしばらく昼寝していた。慌てて大急ぎで千枚小屋に到着したのが夕食ギリギリ。我ながら情けない山行であった。
■現在は山好きの友人と。そして、未来が楽しみ
このような数々の体験を経て、現在は山好きの友人と登山を楽しんでいる。一人で行くことは今でもあるが、筆者にとっては現在のような友人パートナーがいたほうがしっくりくるみたいだと感じている。
だからといって、もちろんずっとこのままという保証もない。この先どうなるのかと考えるとワクワクするような楽しい気持ちがこみ上げる。
ただ決まっていることは、登山を続けるということ。「山がそこにあるから」とジョージマロリーが言ったように、私も「山が好きすぎるから!」という結論に至ったのであった。
明日の山をだれと登るのか。永遠のテーマを追う日々は続いていく。