■クマと遭遇したら!? 絶体絶命にすべきこと

尾瀬の上田代(かみたしろ)にて目撃されたクマ(撮影:鶴岡 亜矢子)

 では、考えたくはないが、突然目の前にクマが現れたらどうすべきなのか。圧倒的に不利な我々に何かできることはあるのだろうか。

 「まず、襲われた時に黙っていたら死にます。近くにあった石を掴み、クマの鼻を殴って助かったおばあちゃんもいるように、何かしらクマに対して抵抗した人が助かります。私自身も学生時代、テント設営中に周囲をクマが徘徊していたという経験があります。そのときは声を出したら逃げていきましたが、クマも基本的には怖いので、テントの中に入るのは躊躇していたようです」

 遭遇という点では、山で食事をしている時も危ないという。嗅覚の優れているクマは少しの匂いでも嗅ぎ分けるため、「匂いのする物を放置しない」「密閉できる箱に入れる」など、対策も重要だ。では、襲いかかってきたときに身を守るための所持しておくべき道具としてはどのようなものがあるのか。

 「熊スプレーですね。使い方を誤ると人にもダメージがあるため注意は必要ですが、効果的です。あと、私は夏でもピッケルを持っていきます。武器はあった方がいいですから」

■過熱する報道による影響も。目指すべきクマとの共生

山にはクマがいる。当たり前のことだが、今一度認識を改めたい

 2023年も残すところ、あと1か月。今年のクマの活動はいつまで続くのか気になるところ。

 「クマは多少雪が降っても活動するので、おそらく12月頭か中旬までは活動してると思います。今年は餌が少なくないため、冬眠(クマの場合は眠りが浅く、巣穴にこもっているだけのように見えることから冬ごもりとも呼ばれる)も遅いかもしれませんね」

 まだまだ、今年は油断できな日々が続きそうだ。そして、過熱する報道にも警鐘を鳴らす。

 「クマを撮影するためにカメラマンが何人も山に訪れていますが、それもクマに対して人間は怖くない生き物だと知らせる結果になっているため、問題行動の一つだと感じています」

 山は本来クマのテリトリー。その中に物珍しさで人間が押し寄せ、普段とは異なる環境を作ってしまうことは、決して喜ばしいことではない。また、2023年冬は暖冬予想となっており、この影響で冬眠しないクマが出る可能性もある。

参考URL:冬眠しない“穴持たず”今年は増加?狂暴クマと遭遇減へ…茂みの中も姿クッキリ新対策 (tv-asahi.co.jp)

 クマと人間の共生は、永遠の課題とも言える。危害を加えるクマから人々の命、生活を守るため、駆除は致し方ないといった考えもあるが、なぜクマが人々の生活エリアまで侵入してきているのか、昔には起こりえなかったこの実情について、改めて今の自然環境を踏まえ考えるべきときなのかもしれない。