■一番印象に残った国は「南米ペルー」
危険な目に遭いながらも、総額1,000万円という金額を使って、楽ではない旅をしてきた周藤氏。150か国を巡る中で記憶に残ったことを聞いてみた。
「最も印象に残った国はペルーですね」南北アメリカ大陸を縦断した際、メキシコからスペイン語圏になりペルー到着時には半年ほどが経過していた。スペイン語がすっかり上達したため、言葉にも不自由せず、ごはんも美味しかったと振り返る。旅も後半になり精神的にも余裕が出てきて、世界的に有名な「ナスカの地上絵」や「マチュピチュ遺跡」も訪問したそうだ。
隣国ボリビアからチリまでを結ぶ、標高4,000m級(最高到達点4,625m)を走る難関ルート「宝石の道」も印象に残っているという。「空がとにかく青くて、深く濃い青さが忘れられない。夜になると無数の星が本当に降り注いでくるようでした。あと、温泉があったのはよかったですね」。標高4,000mで冷え込む夜も、1年ぶりの湯あみで暖かく過ごせたことで、心身ともに癒されたそうだ。
思い出深いのは休憩中の商店で仲良くなったおじさんと息子。おじさんは学校の先生をしているそうで、日本語の単語を聞いてはメモする姿が嬉しかったという。また、野生のアルパカや、ナマケモノが道路を歩く姿も目撃したというから驚きだ。
■無名の地、無人の道に「感動」!
世界を見てきた周藤氏が、忘れられない景色はどこだろうか。
「うーん、難しいですね。アメリカのソルトレイクシティを抜けた先の、人のいない道かな。とにかく自転車で風を切って進むのが気持ちよくて」
同じアメリカでも、世界遺産で北米最大の山岳湖「イエローストーン」や、アリゾナ州にある世界最大規模の峡谷「グランドキャニオン」を見てきた周藤氏が選んだのは、意外にも「名もなき道」の景色だった。有名であることや世界的な観光地ということではなく、無名の地にこそ素晴らしさを感じたのかもしれない。
■今後は「人の役に立ちたい」
周藤氏は、世界一周の旅は2016年7月の帰国で一区切りしたという。旅を終え、挑戦していることと、これから挑戦したいことを聞いた。
■旅の経験をつづった著書『いつか死ぬから旅に出た』を出版
帰国後、本を出版することが周藤氏の一つの目標であったという。2022年6月、念願の著書『いつか死ぬから旅に出た』を出版した。「人生一度。自分の本を手に取ってくれる人がいると嬉しい」とほほ笑む。
本書には周藤氏が自ら撮影した写真が多く掲載されており、読み進めるうちに筆者も一緒に旅しているかのような不思議な感覚になった。景色のよさや、旅の魅力だけでなく、失敗談も盛り込まれており、飾り気のない文章に周藤氏の人柄やリアルな旅の雰囲気を感じられる。
■夢は地元でゲストハウス経営
長い旅を終え、目標だった自叙伝の発刊を成し遂げた周藤氏が次に目指す道はなにか。
「生まれ育った福岡でゲストハウスをやってみたいと思っています。自分自身、旅をしているときに困った経験があるから、旅をする人たちの役に立てたら嬉しいですね」
周藤氏の発言は、ギブ(=give・与える)の精神で溢れている。世界一周がひと段落した後、メディアや個人からの「写真を無料で使わせてほしい」という依頼にも快諾してきた。人の役に立つことであれば損得抜きで物事を判断するようだ。
「でもゲストハウスを経営するならお金を貯めないとね」
■世界を見てきた結果行き着く先
自転車で世界を一周した人物なだけに、話を聞く前はさぞやパワフルで野性味あふれる人だと思い込んでいたが、実際に会って話を聞いてみると、決して特別ではなく「どこのオフィスにもいそうな雰囲気」を持った人だった。
その周藤氏が、15歳で抱いた夢を時間をかけて実現し、ゲストハウス経営という新たな未来を見据えながら少しずつ歩みを進める姿は、目標に向かって足踏みをしている人々の背中を押してくれるに違いない。
「やってみたいことは、とにかくやってみた方がいい。やってみれば良くも悪くも結果が出て、進むべき道が見えてくるはずだから」
周藤氏の旅の詳細は、ホームページでも公開している。http://shuutak.com/