新型コロナウイルスも落ち着きつつあり、海外旅行需要も回復の兆しをみせている。コロナの期間中、海外旅行へは行かず、これから久しぶりに海外旅行へ行くという人も多いはず。

 筆者も先日、4泊5日の日程でシンガポールとマレーシアを訪れてきた。行きの機内では、今回が初めての海外旅行という日本人の若者と話をする機会があったが、そんな人もいるだろう。

 どんなに楽しい旅行であっても、財布や携帯などの貴重品を紛失したり、危険な目にあうと気分が台無しになる。そこで今回は、これまで50か国以上訪れた筆者が意識する防犯対策を3つ紹介する。

■1. 貴重品は必ず体とチェーンで繋ぐ

 日本で暮らしていると信じられないと思うかも知れないが、海外ではスリやひったくりが多い。例えば日本人が好きなフランスのパリでは、外務省が注意喚起を促しているほどである。

 観光旅行者が多数訪問するパリでは、スリ、置き引き、ひったくり等の犯罪が多発しています。特に、エッフェル塔、ルーブル美術館、シャンゼリゼ通り、公共交通機関(特に地下鉄、RER)にて多くの日本人が犯罪の被害者となっています。レストランやカフェでは置き引きの被害が多く発生しています。
引用:外務省渡航安全情報サイト

フランス・パリの中心部に位置するポンヌフ。観光客と同時にスリやひったくりも多いので注意が必要な場所(撮影:黒多 矩明)

 そこで筆者は海外で街を出歩く際、「身ぐるみを剝がされるくらい仕方ない」という意識でいる。具体的には、貴重品は必ずチェーンやストラップ、ウエストポーチなどで体(ズボン)に繋げる。それに加え、バッグのファスナーに南京錠で鍵を掛け、安易に手を入れられないようにするのも有効だ。

 これらのアイテムは、100円ショップやホームセンターで気軽に手に入るので、ぜひ有効活用して欲しい。そして日本では男性が財布や携帯をズボンの後ろのポケットに入れているのをよく見かけるが、海外では盗まれない方が不思議と思っていいだろう。

携帯のストラップ(左上)、財布のチェーン(中央上)、バッグの南京錠(中央下)、ウエストポーチ(右上)は海外で街を歩く際には欠かせない(撮影:黒多 矩明)

■2. 空港でもバッグをベンチにワイヤーで繋ぐ

 先日多くの人が「とんでもない」と思うニュースが飛び込んできた。

 米国のマイアミ国際空港で、空港の保安局職員が保安検査中に旅行者のカバンから金銭を盗むという事件が発生した。
引用:空港の手荷物検査を終えたら財布が消えていた! 逮捕された「犯人のありえない正体」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

 一般的に「空港は安全」と思う人が多いだろうが、そんなことはない。それが海外である。上記ニュースのような被害に遭わないためには、貴重品は全て機内持ち込み用のカバン内に入れ、南京錠で鍵を掛けてX線を通そう。パソコンやタブレット端末などをカバンやバッグから出して通さざるを得ないのは現状のルールでは仕方ないが、これだけでもだいぶ変わってくる。

 またフライト時間によっては早朝や深夜の発着となり、空港で夜を過ごさざるを得ない場合もあるだろう。そんな時はワイヤーと南京錠を組み合わせて、バックを椅子やベンチと繋ぐといい。寝ている間にバックごと盗まれるという被害を防げるし、場合によってはバックを枕代わりにして体を横にすることだってできる。

空港は必ずしも安全とは限らない。空港で長時間滞在する際は、ワイヤーでベンチとバッグを繋げておくといい(撮影:黒多 矩明) 

■3. 公共交通機関のチケット購入時の注意

 訪れる国や都市によって、より危険な場所や比較的安全な場所などさまざまだ。なので海外旅行へ行く際は、事前に情報をチェックするようにしよう。

 一番信頼性が高いのは最初の項目で引用させていただいた外務省の渡航安全情報だ。政府機関が運営しているだけあり、気を付けるべき習慣や法律など非常に細かなことまで記されているので、渡航するうえでチェックしない手はない。

 ただ個人的に治安に関しては、記載されているよりも実際は少し注意が必要だと思っている。フランス・パリの治安に関しても今でこそ「スリ、置き引き、ひったくり等の犯罪が多発しています。」と記載されているが、記載される前から現地で観光業に携わる人々からは旅行者に同様の注意喚起がされていた。よりタイムリーな情報を得るという点では、SNSやネット検索も組み合わせるとなお良い。

 なかでも気をつけたいのは、大都市には長距離の鉄道路線やバスの発着ターミナルが複数あったりすることだ。乗車予定の列車やバスがどのターミナルを発着するのか、あらかじめ確認しておくことをおすすめする。

 筆者はかつて南アフリカのヨハネスブルクを訪れた際、バスでの移動先における発着ターミナルが複数あることを知らなかったために、到着したターミナル周辺が特に治安の悪いエリアで恐ろしい思いをした。結果的に何もトラブルに合わなかったからよかったが、本来であれば行き先を変更するか、それができないチケットであるなら買い直すべきだった。

 そして最後に、旅先だからといって羽を伸ばしすぎないように、お酒はほどほどにしたい。アルコールの影響で判断力が鈍り、事前に把握した情報が活かせずに危険な目にあったということがないようにしよう。ガッツリ飲みたい気分の時は、宿で飲むのが安全性という点では一番である。

世界トップクラスの治安の悪さを誇るヨハネスブルグの中心部(撮影:黒多 矩明)

■安全への意識こそ海外旅行を楽しむ最大の秘訣

アジアのハブ空港として名高いシンガポールのチャンギ国際空港(撮影:黒多 矩明)

 いかがだっただろうか。今回紹介した3点は、いずれも誰でもできるちょっとしたことである。旅行は楽しんでなんぼの世界。だからこそ事前にできる対策や意識をしっかりし、現地では楽しむことに全てのエネルギーを注いで欲しい。