■落ち着いた雰囲気に包まれた西御坊駅界隈

 さらに進むと、終着駅の西御坊駅。ここまでくると、さらに町の様子は違ってくる。学門駅や市役所前駅付近と違い、西御坊駅界隈は落ち着いた雰囲気に包まれているのだ。

西御坊駅に停車中のKR205車両

 御坊という地名の由来は、市内にある本願寺日高別院、別称「日高御坊」に由来する。

日高御坊の山門

 町は寺内町として発展し、その面影も残されている。

旧寺内町の街並み

 紀州鉄道は1989年まで、西御坊駅より先の日高川駅まで通じていたという。西御坊駅から先の線路は、ところどころに残されていたので駅舎跡まで歩いてみた。日高川は紀伊山地の木材などを運ぶ水運として利用され、大阪や東京へは河口の港から船で出荷されていた。紀州鉄道は有田のミカンなどを日高川まで運び、そこから船に積まれる。そのため当初は旅客よりも貨物の運搬が主流であり、日高川駅は物資輸送の要として設けられたとする。

 御坊は寺内町としてだけでなく、江戸時代には日高川水運によって木材問屋も建てられた。また、江戸に木材などを運ぶ「日高廻船」の主用地として栄え、さらに熊野街道が通じていたため、宿場町としても繫栄する。遊郭も存在したらしい。

 現在の西御坊駅界隈は、かつてにぎわっていたであろう町が、いまは眠りについているような雰囲気がある。レトロな外観の店も多く、ゆったりとした気分で散策するのにはちょうどいい。

 地域をめぐれば、今回紹介できなかった見どころがいくつもある。観光地として整備されているわけではないにせよ、ふと立ち寄って、歩きながら自分で何かを探してみる。わずか3kmに満たないものの、紀州鉄道はそんな旅の楽しさを教えてくれる路線であった。