■ブナ坂より緩やかな稜線歩きの登山道

ブナ坂と呼ばれる広い鞍部(撮影:兎山 花)
ゆるやかな登山道(撮影:兎山 花)

 七ッ石山頂ルートと巻道ルートの合流点、ブナ坂は広い鞍部(あんぶ)となっており、休憩適地となっている。ここからしばらくはゆるやかな稜線歩きとなるが、40分ほど歩くと小雲取山への急坂の登りがやってくる。

 小雲取山(標高1,937m)まで約30分ほどかけて登ると、雲取山頂まであと一息、再び緩やかな稜線歩きとなる。赤い屋根の「雲取山頂避難小屋」が見えてきたら、山頂はすぐそこ。宿泊可能な雲取山荘は山頂よりさらに奥、20分ほど下った場所にある。

トイレもある雲取山頂避難小屋(撮影:兎山 花)

■レアな「原三角測点」が現存する雲取山頂

雲取山頂にある「内務省大三角点標石」(撮影:兎山 花)

 現在の三角点は、国土地理院の前身となる陸軍陸地測量部によって設置されたものだが、陸軍が測量を行う前の明治初期1877年(明治10年)頃は、内務省地理局によって測量が行われていた。そのとき設置されたのが「原三角測点」である。

 1888年(明治21年)に創立された陸軍陸地測量部は、軍用の地図作成を目的として測量を行っていた。そして、新しい三角点を設置する際に、「原三角測点」を撤去したされているが、なぜか国内に3か所だけ残された場所があり、その一つが雲取山山頂だ。

 筆者が山頂に立ったとき、三角点が3つもあることがとても不思議だった。あとで調べてみると、2つはレアな「原三角測点」とその「補助点」であり、雲取山に残されている「原三角測点」は、現在の一等三角点の前身となる「内務省大三角点標石」だということがわかった。

 なぜ、雲取山の山頂の「原三角測点」は撤去されず残されたのか。意図的なのか、たまたま撤去し忘れただけなのか。筆者にはわからない。しかし、現在も明治の遺産として日本が大切にしているものであることが感じられた。