アニメや漫画で大人気の『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)のふるさとがどこかを知っているだろうか? 実は東京・埼玉・山梨の1都2県にまたがる日本百名山の「雲取山」だとされているのだ。ファンの間では「聖地」としても知られ、登山口にはキャラをイメージしたのぼり旗も飾られている。炭治郎と妹の禰豆子(ねずこ)が歩いたかもしれない雲取山を訪ねた。

■ふるさとは東京都最高峰

『鬼滅の刃』の竈門炭治郎らの出身地とされる雲取山。炭治郎が妹と歩いたかもしれない絶景の稜線(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)

 雲取山の標高は2,017mで、東京都の最高峰。登山口までは都内から電車とバスでアクセスが可能で、天気のよい日には山頂から美しい富士山を見ることができる。名前の由来は諸説あるが、「雲を手に取ることができるほど高い」ことから名付けられたともいわれている。

 「聖地」として話題になったのは、『鬼滅の刃』がTVアニメで放映され、爆発的に人気となった2019年ごろ。出版元が販売する公式ファンブック上で雲取山が炭治郎と禰豆子の出身地と紹介されると、ファンの間では聖地巡礼のために訪れる人が相次いだという。

 登山口は東京都・奥多摩町方面からの「鴨沢コース」や、埼玉県秩父市からの「三峯神社コース」、ほかの山から縦走して山頂を目指すコースなど多数あり、新緑の初夏や秋の紅葉シーズンはとくに人気が高い。本格的な登山に自信がない人は、登山口や周辺の散策だけを楽しむこともできるので安心してほしい。筆者は、三峯神社コースを登ることにし、まずは秩父方面の登山口にあるパワースポット「三峯神社」へ向かった。

■登山口にあるパワースポットの三峯神社

「奥宮」の鳥居と神秘的な雰囲気の参道(撮影・穂高カレン)

 西武池袋線池袋駅から西武秩父駅で下車し、御花畑駅から秩父鉄道に乗り換え、三峰駅まで約2時間。そこからバスで1時間ほどで「三峯神社」へ到着する。バス停から三峰ビジターセンターへと続く階段を上がると、5分かからずに神社の入口「三ツ柱鳥居」が見えてくる。

 山の麓に建立された標高1,100mの三峯神社は、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が創建したとされる歴史ある神社で、ご神木は樹齢800年ともいわれている。関東屈指のパワースポットとしても有名で、広い境内には、ご縁が叶う「えんむすびの木」や博物館などがあり、自然の豊かさに触れながら参拝することができる。

 三ツ柱鳥居から境内とは別方向の「奥宮」へ向かう参道が、雲取山に続く登山道となる。樹木の間から差し込む光は輝いていて、神秘的な雰囲気だ。

 奥宮を経由して1時間ほど歩くと、山の中に「炭窯跡(すみがまあと)」の案内板が見えてきた。こんな山奥に炭窯があったということが驚きだ。秩父地方では古くから炭生産が盛んで、平安時代の和歌集にも炭窯が歌われていたという。

 「炭」と「窯」……。どことなく炭治郎のルーツがあるように思えてうれしくなる。バス停から往復2時間ほどで散策できるので、一度は訪れてみるのも楽しいだろう。

雲取山までの登山道にある炭窯跡(撮影:BRAVO MOUNTAIN編集部)