■主役はハスの葉! 荷葉酒とは
各地で開催されている観蓮会ですが、薬師池での目玉行事は「荷葉酒」です。「荷葉」とは、ハスの葉のこと。その葉にお酒を注ぎ、それを茎を通して飲むというのです。ハスの葉を象の鼻に見立てて「象鼻盃(ぞうびはい)」と呼んでいるところもあるようです。
ハスには、コラーゲンを合成するのに必要なビタミンC、高血圧予防やむくみの解消に役立つカリウム、ポリフェノールの一種で強い抗酸化作用で老化防止にも効果が期待できるタンニンなどが含まれています。健康に不安が出始めている筆者ですので、この機会を逃す手はありません。しかし、いったいどうやって葉に注いだお酒を飲むのでしょうか。
そこで、開会前に、準備中のハスの葉を観察させていただきました。
ハスの葉には似た仲間のスイレンやサトイモとは違い、葉に切れ込みがありません。そのため、お酒を注いでもこぼれにくい特徴があります。しかし、葉から茎に続く中心部には穴が開いていません。そこで、千枚通しで穴を2,3か所開けるのだそうです。
では、流れていく茎の中はどうなっているのでしょう。茎の切り口を観察すると、大きな穴がいくつも開いています。レンコンは水中の泥の中で育ちますが、植物ですのでやはり酸素が必要です。葉から地下茎であるレンコンに酸素を送るために、茎やレンコンには大きな穴が開いているとのこと。
このハス独特な茎のつくりを利用して、荷葉酒を楽しむことができるのです。
■いよいよ荷葉酒体験へ!
荷葉酒体験は、無料で先着100名という人数制限があります。朝6時半から整理券が配布されるため、遠足前の子どものように前夜から緊張してなかなか眠れませんでした。早起きをして、5時半に現地に到着すると、まだ並んでいる人はおらず、筆者らが先頭になって並び始めました。その後は続々と人が集まって長い行列となったため、整理券を早めに配り始め、6時20分には配布終了となりました。
午前7時、いよいよ開会です。荷葉酒以外にも、ドライバーやお酒が苦手な方向けに荷葉茶も用意されています。開会行事には、町田市長や市議会議長が参加するなど、町田市を代表する行事であることが伝わってきます。また、観蓮会は今年で44年目を迎えるという話に、市民に根付いたイベントであることを実感しました。
そして、ついに筆者の順番が回ってきました。係の方が葉を持ち、そこに少量のお酒やお茶を注いでくれます。飲む人は、茎を手で持ち、そっと口でくわえます。
お酒がどんどん口の中に入って来るかと思いきや、意外とスースーしていて、少しずつしか口の中に入ってきません。多分、茎の中の空気を吸っていたのでしょう。シェイクドリンクを飲むような力はいらないのですが、穴が開いたストローで飲み物を吸い込むような感覚です。ハスの葉の裏と夏の青空を見上げながら、町田市の地酒「尾根桜」をいただくのは最高の贅沢です。
すべてを飲み干すまでには1分以上かかったでしょうか。なかなか減っていかないお酒に焦ってしまい、気がつけば味や香りを楽しむ余裕がなかった自分に反省しきり。それでも、ハスの成分を含んだ荷葉酒に不老長寿の願いを込めて、真夏のひと時を過ごすことができました。来年は、もっと心に余裕をもって再チャレンジすると決めて、現地を後にしました。