土地ごとの歴史や伝説を知っていくのも、旅の楽しみ方のひとつ。今回は島根県の渓谷で、国の天然記念物にも指定されている「鬼の舌震(したぶるい)」を紹介する。

 出雲国風土記の中のエピソードにあり、巨岩や奇岩が点在する独特の景観が楽しめる。遊歩道も整備され、山歩き初心者でも安心。帰りはレンタサイクルで気持ちよく風を感じられる、夏のレジャーにピッタリのスポットだ。

■「サメが女神に恋」ネーミングにもなった神話とは?

散策マップには女神とサメのイラスト(撮影:大善亨)

 「鬼の舌震(したぶるい)」とは、何とも恐ろしいネーミングだ。その由来は諸説あるが、女神を「ワニが慕った」という言葉が転じて「鬼の舌震」となったと言われている。古代の日本では、「ワニ」は「サメ」に対して用いた呼称。つまり、女神を慕ったサメのエピソードなのだ。

 サメが女神に恋をするユニークな話だが、残念ながらサメは女神に嫌われ、巨岩で川をせき止められて振られてしまう。その際に使われた巨岩が渓谷に点在していると言われている。

■ウォーキングで奥出雲の大自然を満喫

スタートは「舌震の”恋”吊り橋」(撮影:大善亨)
長さ160mの「舌震の”恋”吊橋」(撮影:大善亨)

 長さ160mにもなる「舌震の”恋”吊橋」は、ウォーキングのスタート&ゴール地点。女神を慕ったサメも、時を超え自分の恋する思いが吊り橋の名前になったとは夢にも思わなかっただろう。サメの女神への恋は叶わなかったが、吊り橋効果で、一緒に渡る大切な人とよい関係が築けるかも!?

整備が行き届き、安全に散策できる遊歩道(撮影:大善亨)

 バリアフリーの遊歩道では、誰でも気軽に奥出雲の大自然を満喫できる。大天狗岩や水瓶岩(はんどいわ)など、点在する奇岩や巨石が見られるので、飽きることはないだろう。なかでも、アニメ『鬼滅の刃』のエピソードで、主人公の炭治郎が大岩を斬ったシーンを彷彿とさせる「鬼の試刀岩(しとういわ)」は必見。

高さ80mにもおよぶ岸壁の大天狗岩(撮影:大善亨)
ニョキッと立つ水瓶岩(はんどいわ)(撮影:大善亨)
遊歩道からさまざまな角度で見られる水瓶岩(撮影 大善亨)