本格的な登山シーズンが始まった。

 筆者は福井県大野市にある日本百名山・荒島岳(あらしまだけ)の麓で民泊宿を運営しているが、毎週末になると多くの登山客が荒島岳へ訪れている。日々、木々の緑が色濃くなり春から夏への移ろいを感じる季節だ。

 しかし、登る途中でバテてしまいせっかくの山登りが苦行になっている人も少なくない。自分自身学生時代の平成元年に山登りを始めて35年になるが、バテて辛い思いをしたことは一度や二度ではない。

 6月上旬の週末、荒島岳に登り、過去の山行を振り返りながら、バテる理由と対策をあらためて考えてみた。

■長く歩くための歩行術 その1 最初の1時間はゆっくり歩く

 この日は6時ちょうどに宿を出て、荒島岳中出(なかんで)ルートの登山口から少し登った所にある駐車場に車を停め、6時15分に出発した。日曜日とはいえこの時間で駐車場の半分は埋まっており、多くの登山者がすでに登り始めている。

 少し下の中出集落にある登山口から荒島岳山頂までは公式コースタイムで3時間40分(今回はその上の駐車場まで車で来たので約20分歩行時間短縮)、余裕を持って登れるのだが急ぎ足の人が多い。しかし、人間の身体というのはすぐには力を発揮するようには出来ていない。どのようなスポーツでもウォーミングアップを行い、全身の血行を良くして身体を動かすための酸素を十分に取り込んでから本格的な運動に入る。登山も同様、最初の1時間はウォーミングアップと考え、花を愛でながらゆっくりと歩きたい。

 また今回はソロ山行だが、グループで登る場合には次の点には特に気をつけたい。一番ペースの遅い人がリーダーのすぐ後ろを歩き、リーダーはペースの遅い人に全体のペースを合わせるよう心がけよう。自分も前を歩く人たちに後れをとるまいと無理して歩いてバテてしまったことが何度もある。そして、1人ペースが落ちるとグループ全体のペースが遅くなってしまう。

タニウツギ 道中タニウツギが花を咲かせる。花を愛でながら歩こう(撮影:小林 恵)

■長く歩くための歩行術 その2 疲労を感じる前に休憩を

 歩き始めて1時間、標高750m地点で最初の休憩。ゆっくり歩いてきたので、それほど疲れは感じていない。しかし、一度バテてしまうとリカバリーするのは容易ではない。荷物を下ろし、深呼吸して十分に酸素を取り込み、ストレッチをして腰や膝の関節を柔らかくする。

荷物を置き、ストレッチして体をほぐそう(撮影:小林 恵)

 しかし、長く休みすぎると体が冷えて動きづらくなるので、1回あたりの休憩時間は10分程度に留めておく。休憩後は身体が軽くなっているのを感じながら歩く。意識しなくても足が前に前にと出る。

 出発直後に自分を追い抜いたグループに追いつく。既に息が上がっている人がいる様子。やはりウォーミングアップは大事だ。

ブナの天然林の道。余裕のある歩きで景色を楽しみたい(撮影:小林 恵)