梅雨ってやっぱり来ちゃうんですね。ジトジトしてどんよりした空模様は気分も上がってこない。家に閉じこもっていたってしょうがないから、それならばいっそ梅雨を楽しんでしまえばいいじゃないか。きっと、江戸時代の人たちも同じことを思ったはず。

 東京では、かつての江戸に思いを馳せながら梅雨の風物詩「花菖蒲」を楽しめるスポットがいくつもある。粋で風流な江戸の文化を感じながら梅雨を過ごすのもいいものですよね。 

■江戸で花ひらいた多種多様な品種は百花繚乱

眺めているだけで江戸の風流を感じさせる

 紫を筆頭に青、白、黄色、ピンクなど色も鮮やかに、形や模様などの組み合わせから5000品種を超えるとされる花菖蒲。日本では江戸時代にその文化の花が咲いた。

 元々、低地で湿地帯であった当時の堀切あたりはハナショウブの栽培に適しており、歌川広重の浮世絵にも描かれている。

見るも鮮やかに咲きほこる
繊細な模様が美しい

■江戸、肥後、伊勢、長井 個性豊かな4つの系統

系統だけでなく、個性豊かな多くの品種

  江戸で盛んであったハナショウブの栽培。自らを菖翁(しょうおう)と称した幕府旗本の松平定朝が生涯300品種ほどを生みだし、江戸系と呼ばれる品種の基礎を作った。

 その菖翁に弟子入りし、譲り受けたものが現在の肥後系。同じく江戸時代に伊勢松坂にて独自に品種改良されたのが伊勢系。そして、江戸、肥後、伊勢のいずれにも属さないのが長井系。

 山形県、長井市で栽培されてきたこの長井系は、菖翁が確立した品種群の影響を受けていない原種に近いものとされている。そのため、長井古種、古種系とも呼ばれている。

可憐な花々は江戸の頃から人々魅了してきた
時を忘れて見入ってしまうほどに引き込まれる

■江戸の花菖蒲文化が今も残る「堀切菖蒲園」

花菖蒲鑑賞といえば堀切菖蒲園

  菖翁が花を咲かせた江戸のハナショウブ文化を今も楽しむことができるのが葛飾区「堀切菖蒲園」。江戸から明治にかけてこの地域にはいくつもの花菖蒲園があったが、第2次世界大戦時下に水田化され、相次いで閉園。戦後、復興を果たしたのは現在の堀切菖蒲園のみであった。

 今、堀切菖蒲園では菖翁が残した貴重な品種のほか、約200種、6000株の花菖蒲が栽培されている。すぐそばには首都高が走っているが、その喧騒を感じさせないほどに園内は江戸の雰囲気に包まれ、ハナショウブが咲きほこる姿は、今もなお、菖翁が熱心に育てているようにさえ感じさせる。

すぐそばには首都高。現代と江戸が融合する不思議な空間
なんとも上品な佇まい

●施設概要

堀切菖蒲園
〒124-0006
東京都葛飾区堀切2-19-1
TEL:03-3697-5237
入園料:無料
開園時間:8:00~18:00(5/29~6/25)

●MAP