現在放送中のNHK連続テレビ小説『らんまん』。

 筆者は牧野富太郎の大ファンで、林学を学んでいた学生時代、牧野富太郎の邸宅を博物館とした「練馬区立牧野記念庭園」で学芸員実習をさせていただいたこともあり、毎朝楽しみにしている。

 この記事では、植物を愛した牧野富太郎に倣い、関東地方で初夏に見られる身近な植物を10種紹介する。

■日本の植物分類学の父、牧野富太郎

 牧野富太郎は、江戸時代の終わり、現在の高知県に生まれた植物学者。幼少期より植物が好きで、採集した標本を自分で調べるなどして植物の名前を覚えていったとされている。

 その後上京し、現在の東京大学で植物分類学の研究に没頭し、「ヤマトグサ」をはじめ、多くの植物の名付け親となった。

 また、類まれな画の才能を生かし、印刷技術を自ら学び「牧野日本植物図鑑」を刊行。この図鑑の精度の高さは、現在でも高く評価されている。

 94歳で死去するまで、日本の植物を丹念に調べ、世界の学会に発表してきた功績から「日本の植物分類学の父」と呼ばれている。

●関東地方で初夏に見られる植物1.ヘクソカズラ

強烈な臭いが特徴のヘクソカズラ(撮影:鈴木将太)

ヘクソカズラ(Paederia scandens) アカネ科 ヘクソカズラ属

 花期は7月~9月(写真は6月撮影)。つる植物で、道路わきのフェンスに巻きついていたりする。

 名前の「ヘクソ」とは「屁糞」のことで、臭いが強い植物である。葉をちぎって嗅いでみると、その名前の由来がわかるだろう。とはいえ、花は白に鮮やかな紅色でとても美しく、サオトメカズラ(早乙女葛)という別名もついている。

●関東地方で初夏にみられる植物2.カキドオシ

豪華な花が咲く、カキドオシ(撮影:鈴木将太) 

カキドオシ(Glechoma hederacea ssp. grandis) シソ科 カキドオシ属

 花期は4月〜5月(写真は5月撮影)。街中では、少しじめっとした花壇のようなところに見られる。葉っぱに対して花のサイズが大きく、咲くと豪華な印象の植物だ。

 昔から薬草として用いられており、子どもの疳(かん・小児の神経症)をとることから「疳取草(かんとりそう)」という別名もつけられている。

●関東地方で初夏にみられる植物3.オニタビラコ

強い生命力が特徴のオニタビラコ(撮影:鈴木将太)

オニタビラコ(Youngia japonica) キク科 オニタビラコ属

 花期は5月~10月(写真は5月撮影)。アスファルトから芽を出すことのできる、生命力の強い植物。「タビラコ」という別の植物よりも大きいため、頭に「オニ」がついた。

 最近では、オニタビラコを「アカオニタビラコ」と「アオオニタビラコ」と区別するが、「赤オニ」と「青オニ」というのが日本らしくておもしろい。

●関東地方で初夏にみられる植物4.テイカカズラ

ジャスミンに似た香りのテイカカズラ(撮影:鈴木将太)

テイカカズラ(Trachelospermum asiaticum) キョウチクトウ科 テイカカズラ属

 花期は5月~6月(写真は4月末撮影)。壁面をびっしりと覆うこともあるテイカカズラ。花が咲くと、甘いジャスミンに似た香りが漂ってくる。

 平安時代、式子内親王という女流歌人のお墓に、ツルがびっしりと絡みついており、そのツルが生前、式子内親王の恋人であった藤原定家(ふじわらのていか)であるとして、「テイカ(定家)カズラ」の名がついたとされる。