北海道の西側、東西に連なるニセコ連峰。世界的なパウダーエリアとして有名なニセコだが、パウダーが豊富ということは春の積雪も豊富。そんな雪が降り積もるニセコの山々をスピードツーリングというスタイルで一気に走破した。全長30km超! 8時間の記録をレポート。

■ニセコ連峰のあらまし

蘭越町からみたニセコ連峰の山並み。写真にはすべては写っていないが全長は約25km

 ニセコ連峰は東西に連なる約25kmの山脈。最高峰は東端のニセコアンヌプリで1,308m、西端の顕著な山は前雷電の1,203m。大きな山脈ではないが、日本海に面しているのと、その絶妙な地形と山の高さで冬には豊富な雪が降り積もる。東端のニセコアンヌプリにはいくつものスキー場が開発されているが、それ以外の山々にはあまり人の手は入っておらず、特に西側は静かな山域だ。

■海岸からスタート! ニセコ連峰全山縦走

スタート地点の雷電温泉海岸での筆者。前日入りして海を眺め、仮眠した

 スタートは旧雷電温泉の海岸、あえて海抜0mから。すでに海岸沿いや山の麓に雪の気配はないが、ここから真っ白な山を目指すのがちょっとした冒険だ。ニセコ連峰の全山縦走は夏道で45kmと言われている。行程的には2泊3日ほどの山行だが、荷物を必要最低限に絞り、体力と技術を駆使して一気に駆け抜けるのがスピードツーリングだ。雪上であれば夏道よりも移動は速く、ショートカットした効率的なルート取りも可能になる。

 ニセコの山には幾度となく行っているが、全山縦走は初めてなのでどのくらいの時間で目的の東端、ニセコアンヌプリに到達できるかは分からなかった。

■真っ暗な海岸からスタート! 「スムーズに雪に取り付けるかが核心」

倒れたまま放置されている雷電山登山口の看板

 スタートは朝4時すぎ。日本海側の海岸から山登りの一歩を踏み出す。あたりは真っ暗だが、最初のアプローチは3km弱の林道歩きなので問題は無い。ヘッドライトの明かり頼りだが、林道終点の朝日温泉跡につく頃には十分な明るさになっていた。まず目指すのはニセコ連峰西端の山、前雷電だ。一応登山道はあるが長年整備されておらず不明瞭な道なので、登山道ルートではなく、沢を詰めて途切れ途切れの雪をつないで行くことにした。

 十分な積雪がある尾根上に出るまでが今回の山行の核心部。なにせ、このルートを登るのは初めてなので、地形図を頼りに行き当たりばったりだ。水量のある沢はリスクを伴うが、下手に尾根に上がっても、雪がなければ延々と藪漕ぎを強いられる。どの沢を詰めれば雪がつながっているかを知っている訳ではないので、経験を元にした勘に頼るしかない。勘が外れれば、一旦戻って別の沢を詰める。

 より確実なルートでのタイムロスか、ショートカットでのリスクかを常に天秤にかける。そんなルートファインディングを繰り返すのだが、幸いにも今回の勘はピンポイントに良いルートを嗅ぎ分け、スタートから3時間ほどで前雷電に到達することができた。