■アイスバーン! “ざらめ”に“フィルムクラスト”! 時間とともに変化する春の雪

ルート終盤の真っ白なチセヌプリ。雪も緩んで滑りやすい大斜面だった

 前雷電までの夏山コースタイムは6時間ほど。半分ほどの時間で登ったことになるが、スキーの機動力を生かしたスピードツーリングの本領はここから。スキー滑走を含めた山間部の移動の速さを存分に生かして先へ進む。ほぼ中間地点となる目国内岳あたりから雪が緩み始める。緩んだ雪は快適なスキー滑走ができる一方で、登りのスピードは落ちていく。

 緩みすぎる雪はトラブルだが、この日は極端な高気温ではなかったので終始ほどよいコンディションが続いた。チセヌプリは滑り応えのある大斜面の滑走、ニトヌプリでは“フィルムクラスト”の心地よい斜面。そしてイワオヌプリは最高の状態の“ざらめ”を滑ることができた。春の雪は場所というより、時間の経過とともに変化していく。良い斜面に良いタイミングで滑り込むことができれば、至福のスキー滑走ができるというのが、春スキーの醍醐味だ。

■最後のピーク! ニセコアンヌプリはスキーリゾート

ニセコアンヌプリに登る斜面からニセコ連峰を振り返る。遙か先に雷電山が遠望できる

 イワオヌプリ辺りからは比較的手頃なバックカントリーエリアということもあって、それまでまったく見なかった人影がチラホラ現れる。最後のニセコアンヌプリへの登りは、ルート的に難易度も低い登り。しかし、さすがに疲労がたまりペースは落ちていた。だからといって足を止めることはなく、スキー場側から登ってきた人たちが集まる山頂へ到達したのは11時58分。山頂に到達した瞬間に目の前に現れる羊蹄山はなかなかの迫力だ。目前には雄大な羊蹄山がドーンとそびえ立ち、振り返れば駆け抜けてきたニセコ連峰の山々が連なっている。360度の大パノラマとはまさにこのことだろう。感傷に浸るのも程々に、最後のスキー滑走に取りかかる。僕が設定したゴールはスキー場ベースエリアだ。

 春の平日とはいえ、世界に名の知れたスキーリゾートは人が多かった。ザブザブにゆるんだゲレンデの雪は決して滑りやすくはなく、ある意味、山の雪より滑るのが難しいくらいだ。

 海からスタートしたニセコ連峰全山縦走、フィニッシュは賑やかなニセコヒラフのメインストリートというのも気持ちいい。もっとも、そこにいる誰も、僕が海からはるばるやってきたとは夢にも思うまい。

 充実の8時間、改心のスピードツーリングだった。