■道具の進化・普及で身近に!

2つに分かれるスプリットボードにシールを付けて歩いて目的の斜面へアプローチ

 古くから親しまれてきた“山スキー”は、降雪が落ち着いて移動しやすい春先に行うのが一般的でしたが、現在は滑走・歩行用の道具の進化により、厳冬期にパウダースノーの滑走を楽しむユーザーが増えました。

 太く(長く)、滑走面が反り上がって浮力のある新雪滑走に適した「ファットスキー」は、選ぶのが困難なほど多くのモデルが販売されています。機動性を重視した軽量ながらも滑走能力の高いモデルもあります。自分で歩いて登るのが基本ですが、登りでは一般的に「シール(クライミングスキン)」と呼ばれる、(前方にのみ滑り、後ろには滑らない)滑り止めをスキーに装着します。場合によってはスキーやスノーボードをバックパックに取り付けてスノーシューやアイゼン(クランポン)で登ることも。

 2分割できて、スキーのように歩行することのできる「スプリットボード」というスノーボードのラインナップも随分と増えました。ビンディング(取付金具)も歩行(登高)モードのある専用品がどんどん開発され、ブーツも含めて軽量化が進んでいます。

 これら道具の進化は、より積極的に滑走を楽しむことを容易にしてくれました。これがユーザーの裾野を広げるのにもひと役買っています。ひと昔までは、それを生業にしているようなエキスパートしか到達・滑走できなかったような、山奥の急峻な斜面。それらも今や身近になってきています。

■「コース外滑走」とは違う!

遠見尾根への登り出しとなる「エイブル白馬五竜」スキー場の入山ゲート

 「〇〇県、〇〇スキー場の上部、コース外」のように報道されることが多いですが、まずはバックカントリーと銘打つ以上、スキー場の責任ではありません。ただ、紛らわしいのですが、麓から全て自分で歩いて登る場合もあれば、スキー場のリフトやゴンドラなどの索道を利用して、(入山ゲート)から歩き出す場合の両方がある点です。これも登山と一緒ですね。

 バックカントリーは、ゲレンデの立ち入り禁止箇所やロープをくぐっての「コース外滑走」とは違います。「(スキー場の)管理区域外」は、つまり“スキー場”ではないという事です。「スキー場のコースから外れた」という表現もミスリード。誤った解釈へと誘導している印象があります。報道で(ランドマーク的に)名前を挙げられるスキー場は関係ないのに、風評被害もあり迷惑ですね。

●バックカントリーを楽しむ皆さんへ

 “自己責任”は当然なのですが、自分たちで解決できないような困難な状況、命に関わるような重大な事態が予想される場合には、管轄する警察署に一報することをためらわないでください。

 救助にあたる警察や消防、遭対協の(少なくとも、筆者が関わっている)メンバーは危険だけでなく、バックカントリースキーの喜びも十分に理解した人達です。そうでなければ速やかで的確な捜索ができません。安易な救助要請やあまりに無謀な計画や入山後の行動については、厳しい対応をするかもしれません。けれど人智を超えた自然と、それを判断する人間にかかる様々なバイアスによるヒューマンエラー……。アクティビティの内包するリスクの招く遭難事故について、責めることはないはずです。

 とにかく、生命を維持するための最大限の努力を果たした要救助者を労い、(怪我をしていたとしても)無事でいてくれた事に心底感謝しているはずです。残念な結果だった時は本当に切ないですし、心より哀悼の誠を捧げています。