■スノーホーストレッキング

 このシラルトロ湖周辺でスノーホーストレッキングを導入するという案があるようだ。文字通り雪の上を馬に乗って歩くのだ。牧場とは違い、国立公園のど真ん中で乗馬ができるという環境はほかにあるだろうか。カヌーとは逆に目線が高くなり、馬上から見る広大な雪原は本当に素晴らしい。馬の息遣いを感じながら、人馬一体となれる瞬間は他の乗り物では体験できないスペシャルなものだろう。馬の調教や遊歩道利用者との調整など、解決しなければならない点は当然あるものの、うまく馬のポテンシャルを引き出すことで、アクティビティとして、そして移動手段としても馬の利用価値は高いと感じた。

スノーホーストレッキングの導入が検討されている蝶の森遊歩道

 馬はこの地方の歴史にとって外すことのできない存在だ。明治19年に塘路湖畔に建てられ、北海道遺産にも選定されている「北海道集治監釧路分監本館」は、明治34年にこの地方での役割を終え、受刑者と職員は網走分監(後の網走監獄)へと移った。そして施設を転用する形で日本陸軍の軍馬補充部が設置され、寒冷地に適した軍用馬の育成が行なわれるようになった。そう、「馬」である。

 スノーホーストレッキングへの導入が検討されている道産子は北海道産の馬で、頑健で粗食に耐え、寒さに強い。サラブレットや輓馬などに比べると小柄で、気性も温順、持久力と速度に富む。なんといっても馬が健気で可愛いのだ。道産子の賢さ溢れるトレッキングは多くの人に受け入れられるコンテンツとなり得るだろう。雪の釧路湿原を道産子に乗って歩く姿を思い浮かべるとワクワクするではないか。実現すれば、馬と町との新たな物語が生まれることになる。そんな想像を膨らませながらシラルトロ湖を後にした。