■紀州南高梅の栽培システムも炭と深い関わりがある

深い山が豊かな川を生み、豊富な自然の恵をもたらす

 このエリアの特産品でもある梅の栽培方法として、世界農業遺産にも指定されている『みなべ・田辺の梅システム』も、実は炭と深い関連があります(ちなみに、全国の梅の生産量のうち、和歌山県は約6割を占め、なかでもみなべ町と田辺市は日本一の生産量を誇っています)。

 紀州の梅の栽培方法は独特です。この地域では、まず元々は肥沃ではなかった山の上に備長炭の原料となるウバメガシなどを植えて薪炭林を作ります。これにより、土砂の崩落を防ぎつつ、土壌に梅の生育に必要な養分を与えるのです。そして、その下に梅林、ため池、田畑の順に作っていき、自然の循環を活用しながら梅や米を育てます。梅の花の受粉は、薪炭林に住むニホンミツバチが担うという仕組みです。

梅の時期は梅雨前。今はさまざまな柑橘類が楽しめる時期

 美味しく大きく、果肉がしっかりしている紀州南高梅は、こうして生まれています。昨今「SDG’s」が掲げられていますが、まさにこれこそが「Sustainable Development Goals」と言えるでしょう。

■獣害にも独自の解決法を考案

田辺市の名産の数々

 近年は、「畑の作物を鹿や猪、猿に食べられてしまう」という問題が、田辺市の農家の方々を悩ましていたそうです。この獣害について、市内の若手農業集団「日向屋」は、農業の傍ら猪や鹿の狩猟、解体、加工し、直売所など「ジビエ」として一般にも販売する流れを確立しました。獣害は全国で問題になっている大きな課題です。狩猟はできても「解体や加工」が大きな障壁になっている地域が多いので、これには大変驚かされました。

豪華な地元食材を揃えると、キャンプ料理欲も湧くってもんだ

 また、木を切らない林業に取り組む株式会社中川は、時代の流れで増えていた「植栽放棄地」をゼロにすることを掲げ、野生動物が過ごしやすい森へ戻す活動を行っています。彼らはこの取り組みにより、動物たちが里に降りてこなくても森で過ごせるよう、問題解決を目指しています。

田辺市のクラフト地ビール「ボイジャーブルーイング」。キャンプ料理にもぴったりです

 訪問時に紀州備長炭で焼いてみた猪のお肉は、とてもジューシーで旨味があり、シンプルに焼くだけでも非常に美味しかったです。この手の肉を産直で普通に購入できるとは、地元の方々が羨ましい限りです。