標高の高い山では、すでに夏山シーズンから秋山へと季節は移っている。台風や前線などで天気が優れない日が続いているが、登山の楽しみは何も山頂を目指すだけではない。

 森を散策しながら自然の表情を観察するのは、かけがえのないひとときだ。“山歩き”は常に新しい発見がある。『あつ森』で人気の「ヒカリゴケ」に出会うのも、そんな楽しみのひとつだ。

■暗闇に輝くエメラルドグリーン! ヒカリゴケとは

 ヒカリゴケは北半球の寒冷地原産の小さなコケの一種で、北海道や本州の中部以北に生息する。最近では任天堂のメガヒットゲーム『あつまれ どうぶつの森』でアイテムとして登場しているらしく、認知度が上がっているようだ。

長野県・志賀高原の登山道脇のヒカリゴケ

 最大の特徴は、その名の通り「光る」ことだが、実はヒカリゴケ自体が発光している訳ではない。差し込んでくるわずかな光で光合成を行う際、緑色域の波長の光をあまり吸収せずに反射するために、緑色に見えるらしい。長野県佐久市岩村田は国内最初の発見場所であり、学術的価値から国の天然記念物に指定されている。

■見つける喜び! まるで宝探し!

 ヒカリゴケは登山道沿いでも見られるのだが、目にしたことがない人も多いかもしれない。登山ガイドブックや昭文社『山と高原地図』などでも生息場所が記載されている。標高1,500~2,500mくらいの亜高山帯の樹林帯で岩の隙間や倒木の根の影などの涼しくてうす暗い、湿った環境に生育している。条件を満たすような場所で足を止めてじっくりと探す必要がある。

 僕の住む長野県では登山道脇や林道で見つけることができ、意外と身近な存在だ。日当たりの悪い斜面、岩がゴロゴロして苔が覆っているような場所では、時間が許せば探してみるのが習慣となっている。

息を止めてそっとシャッターを切る。低照度に強いデジカメなら綺麗に撮れる?

 見つけるのに慣れてくると、まるでヒカリゴケに呼ばれたような不思議な感覚がある。ドキドキしながら岩の隙間をそっと覗いてみることが、まるで宝探しのようで楽しい。山仕事の途中での憩いのひとときだ。