日本有数のスキーリゾートとして名を馳せる、長野県北部の“Hakuba Valley”。後立山連峰・北アルプス北部への登山はもちろん、各スキー場から手軽に眺められる雄大な山岳景観も人気だ。

 白馬村「八方尾根スキー場」のトップから唐松岳へとつながる八方尾根には、アルペンムード溢れる絶景の尾根歩きが魅力のトレッキングルート(登山道)がある。今は夏の花の最盛期!  1時間半ほどでたどり着く「八方池」を目指し、花々を楽しみながら歩いてきた。

■ゴンドラ・リフトで一気に高標高へ!

夏空の下、展望に優れた尾根歩きは気持ちがいい!

 八方尾根スキー場のゴンドラとリフトを利用することで、一気に標高を上げることができるのが魅力だ。暑い下界から素早く移動できるのが夏は特にありがたい。

 主なアクセスルートは次の2つ。

黒菱ライン。駐車場から見上げる夏の「黒菱ゲレンデ」

●八方アルペンライン:標高770mの山麓から、八方ゴンドラリフト「アダム」、アルペンクワッドリフト、グラートクワッドリフトの3つを乗り継いで標高差1,060mを上がり、1,830mの八方池山荘へ。
大人往復:3,200円
●黒菱ライン:黒菱林道をマイカーなどで上がり、黒菱駐車場(無料・約200台)に駐車。黒菱ラインのリフト2本を乗り継いで八方池山荘へ。
大人往復:1,680円

八方尾根スキー場:https://www.happo-one.jp/

 グラードクワッドリフトを降りると「八方池山荘」だ。隣接して売店やトイレもあるので、ここで準備を整えて歩き出す。ちなみに道中のトイレはもう一つ。石神井ケルンと第2ケルンの間(分岐付近)にもある。

「尾根道コース」は白馬三山方面の眺望に優れ、「木道コース」は花が豊富!

 尾根上を直登するルート「登山道コース」と、巻き道で徐々に上がっていく「木道コース」を選べる。好みで選択してもいいし、行きと帰りで違うルートを歩くのもいいだろう(※途中、何箇所か合流するポイントがある)。

■次から次へ! 目を奪われる高嶺の花々

「木道コース」の途中から見下ろす白馬村。高い木がないので見晴らしがいい

 スキー場のトップ、リフトの終点である「八方池山荘」は標高約1,800m。森林限界より低いはずだが、すでに高い樹木が目立たない。これは地面が「蛇紋岩」で構成されているためだと言われている。そのため、八方池上部付近までは植生が逆転している。本来であれば、より標高の高い場所に生息するはずの植物が多く見受けられるのだ。

 ちなみに、さらに標高の高い2,130mあたりでは背の高いダケカンバの森となり、その先の「丸山ケルン」辺りで森林限界を迎える。

可憐でいて華やかなシモツケソウ

 トレッキングコースに沿いはまさに高山植物の宝庫! 次から次へと可憐な花々が迎えてくれる。この時期は夏の花からどんどん秋の花に変わっていく。かと思えば、雪渓が残るひんやりとした窪地には初夏の花も残っていたり……。花好きにはたまらないフィールドだ。週末などには渋滞することもあるので、コースタイムの倍くらい余裕をもっておくと安心して楽しめる(※混雑時、木道上や狭い場所では通行の妨げにならないように注意したい)。

主だった高山植物のそばには説明書きがある。花々の名前を覚えるチャンス!

 大まかな種類まではわかっても、判別が難しい植物は多い。ハンドブック(図鑑)を持ち歩くのも大変だし、帰宅してからだとどうしても同定しにくい。ルート上、主だった高山植物の横には、名前などを説明する標識も設置されていているのが親切だ。

■「見えそうで見えない……」空を映して輝く八方池!

立派なケルンはランドマーク。休憩に適したところも多い

 適度な間隔で立派な“ケルン”が尾根上に存在するのも八方尾根の特徴だ。ちょうどいいランドマークになってくれている。第2ケルンを過ぎた登り坂の途中、八方ケルンで向きを変えてもうひと頑張りすると、第3ケルンと共に目的の「八方池」が見えてくる(※ただし、視界不良時には池の存在に気づかないくらいホワイトアウトすることもある)。

「惜しい!」もうちょっとで山々が顔を出しそうなのだが…… 水面の輝きは印象的で十分美しい

 池の周囲にはすでに多くの人々が集まっている。不帰(かえらず)ノ嶮や白馬三山などを水面に映す、リフレクションの絶景が有名なスポットだ。ただし、晴れていることは当然ながら、(水面が鏡になるために)風がないことや、(映り込む)山肌が明るく照らされる午前中がベスト。などなど、条件が揃わないと“完璧な映り込み”には出会えない。

夏空を映す八方池は憩いのスポットでもある。のんびり過ごしたい

 「今日は見られると思ったんだけど……」そんなことを言いながら、ガスの動きに一喜一憂していた。空や雲の表情にこんなにもドキドキ・ワクワクさせられるのも、非日常の世界ならでは。よい夏の思い出になるのではないだろうか。