■温泉で満足したら下山、物足りなければさらに登山!

硫黄岳から南に続く岩の横岳、赤岳、阿弥陀岳の稜線。中央の高い山が八ヶ岳最高峰の赤岳

 本沢温泉のいいところは、そこを目的地にすることができることと、そこを拠点に本格的な登山もできることだろう。稲子湯の登山口を往復するだけでも6時間はかかるから、温泉を“ピーク”として下山する人が多いことも頷ける。とはいえ、見上げれば硫黄岳があり、すぐ近くには天狗岳もある。これを登らない手はない、というハイカーには、ぜひ登山も楽しんでもらいたい。

夏沢峠から硫黄岳に向かう道すがら、天狗岳方面を振り返る。蓼科山や北アルプスも近い

 硫黄岳は、本沢温泉から1時間登った先にある夏沢峠から、さらに南へ1時間程度で登ることができる。野天風呂から仰ぎ見たあのそそり立った山が、重厚な山容を従えて眼前に迫る。分厚い岩壁と深く切れ落ちた谷が、かつての噴火の凄まじさを感じさせてくれる。山頂は広く平らで、北アルプス、中央アルプス、南アルプスをはじめ、浅間連山、奥秩父方面、富士山も眺められる大絶景が待っている。そして眼前には横岳や赤岳まで続くダイナミックな稜線も。

 天狗岳は、夏沢峠から北へ1時間半で到達できる双耳峰だ。屹立した岩峰の東天狗と丸みを帯びた広い山頂の西天狗の間は、さらに40分ほどで往復も可能。こちらも展望のよさでは硫黄岳にひけをとらない素晴らしさ。特徴的なのは、北八ヶ岳の原生林の広がりを見下ろせることだろう。とても美しい。

 そんなわけで、今回は八ヶ岳で楽しむ贅沢な「夏山温泉ハイク」をお届けした。本沢温泉をベースキャンプにして登山をするのも楽しいし、ただただ温泉とビールに溺れる週末を過ごすのも捨てがたい。八ヶ岳の中でもゆるめに楽しめるコースだけれど、自分の体力や経験、そして装備を踏まえて、この夏の計画の参考にしてほしい。

<低山トラベラー厳選。本沢温泉周辺の立ち寄るべきスポット>
・【現地情報】@honzawa2150のTwitterでチェック
・【宿泊】本沢温泉のテント泊は最高。いつか小屋にも泊まってみたい
・【温泉】じつは登山口の稲子湯も好き(日帰り入浴も可能)
・【縦走】天狗岳から中山峠を経て「渋の湯」へ抜けるコースも◎(健脚向け)
・【山小屋】中山峠すぐの黒百合ヒュッテはビーフシチューが絶品! オリジナルグッズもかわいい
・【定食】八ヶ岳東麓ならレストラン「ストローハット」が鉄板(本連載2度目の登場)