日本で一番島の数が多い長崎県。そのなかでもたった一つ、コンクリートでできた異質な島がある。軍艦島(正式名称:端島)だ。島の外観が軍艦「土佐」に似ていることから、そう呼ばれるようになった。

 明治時代に産業革命で栄えたが、今や無人廃墟と化している。しかし同じ島の観光ツアーは人気を博し、映画「進撃の巨人」やB'zのPVのロケ地にも選ばれた。

 この記事では軍艦島の今と、人々を惹きつける魅力を紹介する。

■世界文化遺産に登録された、日本の最先端を走った島

海上に浮かぶ姿はまるで軍艦のよう(写真提供:長崎県観光連盟)

 軍艦島は2015年に世界文化遺産に登録された、「明治日本の産業革命遺産(製鉄・製鋼、造船、石炭産業)」の構成要素の一つである。

 軍艦島の海底には良質な石炭が多く眠り、かつて石炭が日本の主要エネルギーだった頃、宝の山とされた。本格的な採掘計画と共に、島の拡張と居住環境の整備を進め、日本初の鉄筋コンクリート住宅や日本一のTV普及率など、日本の最先端を走った。最盛期には約5300人もが住み、当時は世界一の人口密度だったと言われている。

軍艦島での当時の生活の様子(写真提供:長崎県観光連盟)

 石炭によって日本の近代化を支えた軍艦島だったが、政府のエネルギー政策の方向転換により主要エネルギーが石油に移り変わり、炭鉱は1974年に閉山。無人の島となった。

 2001年に島が長崎市の所有となったことをきっかけに、市が見学通路の整備を始めた。2009年には一般の方へも開放。各船会社が運航する「軍艦島上陸ツアー」に参加すると、軍艦島に上陸できるようになった。