■90年代までのアウトドア料理は豪華だけれど……
そこにこだわった理由は、90年代までに「アウトドア料理」と紹介されてきた料理が、とても難しく見えてしまっていたことにある。
アウトドアならではの手法を使うためなのか、はたまた豪華に見せるためなのか、用意しなければいけない食材の量がかなり多かった。料理を仕事にしている自分でも、これを見て作ってみるには、かなりの覚悟が必要な料理が多かった印象だ。
手間と時間がかかるものばかりでは、読者にとってはハードルが高く、これでは作り手側の自己満足ではないか? このままだとアウトドアで料理を作る楽しみは広まらず、一部の人だけの楽しみになってしまう。それでは、やがてシーンが衰退していくのではないかと思っていた。
■食材そのものの味を感じられるようなレシピ作り
その後、私はメディアでアウトドア用のレシピを作る立場になり、難しい料理ではなく、オートキャンプ向けの手軽な料理を「キャンプ料理」と名付けて雑誌で紹介し始めた。
当初から意識したのは、材料は少なめ、手順も簡単なこと。調味料も手に入りやすく、味が決まりやすい馴染みのあるものを使っていた。しかし、食が身体に与える影響を知るようになるにつれ、難しくならない程度に食材の組み合わせやレシピで旨味が出るよう、工夫をするようになった。
レシピを簡略化した分、ハーブやスパイスを少しだけ加えることも提案し続けてきた。ハーブやスパイスならかさばらず、少量入れるだけでも味が良くなり、身体へのよい効能があるなど、良いことづくめの食材なのだ。
近年は、スパイスのプロの協力を得て、スパイスとハーブに小笠原の塩を加えた無添加の「BBQシーズニング」をプロデュースしたので、ぜひ試してみてほしい。
これからは食にかかわるものとして、農家や酪農家の方々が手によりをかけて仕上げたおいしい食材を大事に、丁寧に食べたいと考えている。「キャンプ料理」においても考え方は同じで、食材そのものの味を感じられるようなレシピ作りたい。私自身、お店を始めて目の前のお客さんに食事を提供するようになってからは、よりその考えが強くなっている。