登山、その他のアウトドアアクティビティを楽しむ人にとってインソール(靴の中敷き)を変えることによる効果を実感している人はどれくらいいるだろうか? 一見地味だが確実に違いが出るインソール。プロアスリートでなくても、靴を履いて行うスポーツ、果ては日常生活の“普段履き”の靴にも入れて愛用している意識の高い人もいるかと思う。

 スキーブーツのインソールも製品に入っている純正品よりも、社外品を入れ替えた方が圧倒的にメリットがある。社外品のインソール選択において、自分の足形に合わせる“カスタムフィット”と、形があらかじめできておりサイズだけで合わせる“既製品”とに分かれるが、どちらがよいのか? それぞれの利点とは?

■ただの中敷きじゃない! パフォーマンスを高めるインソール

 靴の中に入っている中敷き、それがインソールだ。スキーやスノーボードブーツの場合は、外側を包むシェルと、その中にあるインナーブーツに分かれるが、インソールはインナーブーツの中に入っている。

 インソールは製品の一部として付随してくるが、パフォーマンスを発揮するうえでインソールの役割は非常に大きい。それ故に、意識の高い人はよりよいフィッティングとパフォーマンスを求め、社外インソールを別に購入して入れている。外からは見えない部分なだけに、その意識がない人にはまったく分からない世界かもしれない。しかし、靴文化の社会である欧米諸国では新しい靴を買ったときに、別のインソールを入れるというのは普通だ。元々入っているインソールはその場で処分してしまう人もいるという……。

■たった2%! されど侮れない足裏の重要性

保温性、クッション性、サポート性など求めて、複数の素材を組み合わせている

 人間の身体において足裏の表面積は、およそ2%しかない。だが、その2%で全体重を支えている。優れたインソールを作るにはコストがかかり、個人差も大きく万人に合わせた物が個々に適しているとは言えない。そのため、靴ブランドはインソールに関してはインソールブランドに委ね、製品に予め付随するのは安価な形だけの物を入れている場合がほとんどだ。それはどんなに高価なブーツでも同じこと。スキーブーツは非常に高価な靴だが、インソールに関しては上記の理由でお粗末なものだ。そんなスキーブーツ用のインソール選びの要点を解説してみよう。

■カスタムモデルか、既製品か? 「値段だけじゃない」“静的なフィット”か“スムーズな動き”かがポイント

 インソールには大きく分けると、足形に合わせて成形するカスタムモデルと、予め形状が決っていてサイズなどを足、ブーツに合わせてカットして入れる既製品とがある。

 当然ながらカスタムモデルは手間の分だけ高価で、既製品の方が割安だ。自分の足形に合わせて成形すると、フィット感は抜群だ。ぴったりと隙間なくフィットしたインソールを作ることができる。良いインソールが必要なら、「より高価なものが優れた物!」と考えがちだが必ずしもそうとは限らない。

 インソールに関してはフィット感とパフォーマンスは別に考えた方が良い。ぴったりと足裏にフィットしたインソールは静的な力を発揮するには適しているが、動的な身体の動きを妨げてしまう。足裏には土踏まずを含め、いくつかのアーチ形状がある。このアーチが動く余裕があることで、膝、腰、全身の動きをスムーズに、思い通りに動かすことができるのだ。つまり、完璧にフィットしたインソールは足裏の動きを妨げてしまうのだ。この点で、既製品のインソールは必然的に多少のスペースができることで、足裏の動きを妨げないという利点がある。優れた既製品のインソールであれば足裏のアーチをサポートする凹凸があり、サイズに合わせてその凹凸の位置を考慮して配置している。

 つまり、静的なパワーを重視するならカスタムモデル、動的でスムーズな動きを求めるなら既製品のほうが優れていると言える。値段の差は制作コストの差であって、品質の差ではない。