春から初夏にかけて田舎には美しい水鏡が現れます。それは水を張った田んぼです。山間部の棚田では5月下旬ごろから田植えが始まり、山や空を映しだします。自然が織りなす景色を一目見ようと、観光客やカメラを持って訪れる人も少なくありません。先日、新潟県十日町市にある星峠の棚田を訪ねたので、現在の状況や問題点、これからのお話をお伝えします。
■田んぼが鏡に変身! 星峠の棚田へ
山の斜面や谷間の傾斜地に階段のように作られた水田のことを棚田と言います。新潟県十日町市にも点在しており、最も人気のあるスポットが星峠の棚田です。300年も前に手でひとつひとつ作られ、現在まで継承されている歴史があり、大小さまざまな約200枚もの田んぼがあります。市をあげて観光と振興を進め、2022年には農水省「つなぐ棚田遺産」に認定されました。稲の生育状況によりますが、4月の雪解けから6月半ばごろまで水鏡を見られます。
どの時間帯でも美しい景色を見せてくれますが、条件の整った朝に見られる雲海と太陽がのぞく瞬間が幻想的であると、多くのカメラマンを魅了しています。2009年の大河ドラマ『天地人』のオープニング映像にも起用されたほどです。
■棚田存続の危機? 維持のための活動
棚田はさまざまな役割を持っています。食料である米の生産はもちろん、土砂崩れの防止・抑制、多様な野生動植物の生息・生育、先人の築いた歴史や・文化の伝承、良好な景観を形成するなど、多様な役割を果たしており、近年注目されています。
現在、全国各地の棚田は存続の危機にさらされています。通常の田んぼと違い、管理に非常に手間がかかります。地形の問題や田んぼの規模から重機が入れないため、手作業で行なっているところも少なくありません。維持が大変なのです。地域によっては農作業を行う方の高齢化や次世代の担い手がいない問題もあります。
さまざまな課題を解決すべく、令和元年には棚田地域振興法が施行されました。農水省では優良な棚田を認定する取り組みとして「つなぐ棚田遺産〜ふるさとの誇りを未来へ〜」を設置し、星峠の棚田も2022年に認定されました。国をあげて未来に残すための活動が広がっています。私たちにできることとして、棚田で作られた米の購入やふるさと納税をする、棚田のオーナーになることが選択肢として挙げられます。お米を買って応援すれば双方においしい思いができますね。
■棚田を見に行くときの注意点
そもそも棚田は観光地ではなく、居住されている方の生活や仕事の場です。個人の農家さんがそれぞれに生業として稲作を行なっている場所です。あくまでも私有地に訪れるので、マナーを守る必要があります。田んぼや畑に入らないようにしましょう。米作りが第一であり、車道では農耕車を優先し妨げないようにします。農作業する方は普段の生活を送っているので、無断で撮影してはいけません。ゴミは持ち帰り、美しい景観を汚さないようにしましょう。
星峠の棚田には景観を楽しむスポットがあり、募金箱が設置されています。これからも存続するように、という願いを込めることもできますね。
この美しい自然の景色を未来に伝えていけるように大切にしていきたい、と思わせられました。
■交通アクセス
●電車の場合
ほくほく線「まつだい駅」下車、タクシーで約20分
●車の場合
関越自動車道「六日町IC」より国道253号線を車で約1時間
北陸自動車道より「上越IC」より国道253号線を車で約1時間
マップコード:298 138 536*58
カーナビ 住所:新潟県十日町市峠1513(棚田にあるお手洗い)
または、新潟県十日町市峠729(集落センター)025-598-2521
<まつだい駅(道の駅ふるさと会館)からのルート>所要時間 約20分
R253を上越方面へ進み、「池尻」交差点を斜め左に曲がりR403に入って約15分です。
集落への入り口や集落内には看板が設置されていますので、迷わず行くことができます。(見逃し注意!)
集落が終わったところから棚田が始まります。
駐車場:普通車:20台
大型車:1台