■本国ではお弁当箱として利用?

 ちなみにトランギア社の本国スウェーデンでは、メスティンはスウェーデン語でMatdosor(発音:マッ・ドーソー、日本訳:弁当箱)と呼ばれている。基本的にフードコンテナとして使われ、調理器具として使用する人は珍しいようだ。日本で調理器具として利用されているため、これを聞くと驚く。

 商標権は登録されておらず(特許情報プラットフォーム参照)メスティンは一般用語として使われている。たまにトランギア社以外のメスティンは偽物と書かれていることがあるが、誤った情報だ。

■どこからヒットしたのか?

ダイソーのブランド力が全体の認知に繋がったのは間違いない(写真:園田広宣)

 現在の形でのメスティンの販売は1970年代から行われていたが、日本で急激に売れ始めたのは2020年頃。それまでもコアなユーザーは使用していたが、認知され始めたのは2016年のマンガ『山と食欲と私』(信濃川日出雄)でも、主人公がコミカルな歌と共に使っている様子が描かれている。その後マンガ『ゆるキャン△』(あfろ)でも、2017年に小さく取り上げられる。そして、2018年11月にキャンプを趣味とする芸人のヒロシが、NHKでメスティンを使っている映像が放送され、その後さまざまな出版社がメスティン飯のレシピ本を出し始める。

 リモートワークが一般に認知・普及し、外出が減ったライトユーザーがキャンプの新しい形としてメスティンを試しはじめるとブログやインスタグラム、YouTubeに動画が上がり始め、急速に認知が広がった。

 この時、メスティン飯が「インスタ映え」することに多くのユーザーが気がついたのも、大きな要因だろう。2020年6月にダイソーにて500円メスティン(税込550円)で販売されると加速度的に人気が出て、一時品切れ状態に陥る。

 2022年の現在もさまざまなキャンパーがメスティンの新しい調理方法をネットに紹介し、根強い人気が続いている。日本人は独自の米文化があり、メスティンとの相性がとてもよい。今後もメスティンは定番クッカーとして定着してゆくだろう。

<参考文献>
・ライフデザイン学研究 9号 総論
「飯盒の歴史と機能について」 東洋大学・坂口正治教授