■底面が広いのは、焚火の不安定な炎を効率よく受け止めるため

 他のクッカー(コッヘル)が円筒形なのに対して、メスティンは底が広く、浅い独自の形状をしているのは、本来「焚火」で使うことが前提となっているためだ。これは元となっている兵式飯ごうが焚火の不安定な炎を効率よく受けるため、底が広くなっていることに由来しており、弱く不安定な炎でもご飯を炊けるようになっている。

■軍隊で火に並べ大量に調理するための「角型」

収納性を重視するため、大きめのメスティンに小さめのメスティンがすっぽり入る(写真:園田広宣)

 角型クッカーという特殊な形状は、サイズ違いのクッカーを複数同時に収納でき、内部に道具を納めるのに都合がいいから。しかし、兵式飯ごうとしてのもっと重要な役割が「同時に大量にご飯を炊く」ことだ。

 これはソラマメ型の兵式飯ごうにも言えるが、軍隊では兵士の飯を大量に炊くため、一斉に並べて薪で炊く。スゥエーデン旧式飯ごうは楕円形状で大量に並べて火にくべるのに向かない。北欧以外の地域での活動のため、新たな飯ごうの改良が必要になる。そこで「隣の飯ごうと隙間なく」設置するために、「四角」の形状が都合がよかったのだ。当時の開発資料がほとんどなく、口伝と著者の推測もあるが、事実ならこの形状に納得がいく。

■メスティンとアルコールストーブ

角型クッカーはアルコールストーブ、円筒形クッカーはガスストーブと相性がよい(写真:園田広宣)

 メスティンは不安定な炎を効率よく熱に変換する。トランギア社はアルコールストーブの開発にも力を入れており、それに合わせてメスティンの形状も工夫されたと考えられる。現在、他社のメスティンの形状はトランギア社製品を模範としているものがほとんどで、メスティンの形状がアルコールストーブと相性がいいのは間違いなさそうだ。

クッカーとバーナー、燃料との相性はよくチェックして使いたい(写真:園田広宣)

 それに対して伝統的な丸型クッカー(コッヘル)は主にガス・ストーブやガソリン・ストーブを開発していたメーカーが開発、丸い形状は火力を1箇所に安定して集中させるストーブに向いていると言えそうだ。