爺様はかつて、後妻の息子を後継にしたがった祖父により伊東の後継から外され河津(かわづ)の所領を与えられた。しかし爺様は庶流として生活させられながら、伊東の所領を取り返そうと虎視眈々と機を窺っていた。

 NHK大河の第一話、および二話で登場したシラミまみれの薄汚れた男、我が家の坪倉由幸演じる「工藤祐経(くどうすけつね)」は祖父と後妻の孫であり、爺様が後見を担わされていた。しかし祐経が京都へいる間、好機と見た爺様は伊東の所領を取り返し、祐経に嫁がせていた自分の娘と強制的に離縁させた。このことで祐経は資産がなくなり、あのような汚らしい身なりになっていた。

 その後、爺様は河津の所領を長男の河津祐泰(かわづすけやす)に任せ、伊東の地を治めていたが、当然ながら工藤祐経は爺様に恨みを募らせていた。

 爺様が近隣の武士を集めて伊豆奥野で狩りを催した際、恨みを募らせていた祐経は、爺様と河津祐泰が一緒にいるところを襲撃したが、矢が逸れて爺様を討てず、息子である河津祐泰のみ殺害した。その後、祐泰の妻は息子2人を連れて曽我氏に嫁いだが、兄弟は祐経に恨みを抱くようになった。この祐泰の息子たちが後の「曽我兄弟」であり、彼らは伊東の爺様の血を引く孫なのだ。

 そんな曽我兄弟は仇討ちを決意した後、修行のために諸国を旅をするようになり、「富士の巻狩」に父の仇である工藤祐経が参加すると聞いて、自らも参加。巻狩の間に仇討ちの機会を窺い、ある夜に宿所に押し入り工藤祐経を討ち、完遂した。

 この仇討ち物語は健気な兄弟が修行して仇討ちする様子、鎌倉幕府の主要な御家人である畠山重忠らが関係したことなどで人気を博し、「赤穂浪士の討ち入り」や「伊賀越えの仇討ち」にならぶ日本三大仇討ちの一つとして知られるようになり、江戸時代には歌舞伎や能などで演じられるようになった。