■再生しつつある森の登場人物たち

 木道ゾーンを抜けると、トレイルは気持ちの良い森の中へと訪問者を誘っていく。森林浴を楽しむうちに、動物のシルエットが見えてきた。かつてこの森に生息していたヒグマとヨーロッパバイソンだ。お次は近年生息数が増えているオオヤマネコ、アカシカ。そして何度か公園内で姿が確認されているものの、定着はしていないとされるオオカミなどが次々と現れた。

 動物たちのシルエットは、実物大の鉄の板で切り出されており迫力満点。解説ボードによると「オオカミなどの大型の捕食者が生息していない以上、アカシカなどの大型草食動物の個体数が増えすぎるのを防ぐため、人間による狩猟が必要です」とのこと。

遠吠えをしているオオカミのシルエット。国境を超えてこの森を訪れていることは確認されている

 さらに進むと、直径30cmほどのブナを壁が囲った不思議な場所に出た。

 傍にある展示によると「アイフェルの森の木はまだ若い。しかしブナは300年以上生きる。樹齢300年ともなると、ブナを囲っているこの壁の太さまで成長する。しかし毎年成長する大きさはわずか数ミリです。」という解説がなされていた。この壁の大きさまで立派に成長するまで、あと200年以上はかかるのか……。

 奥に向かう途中、道に沿って先ほどと同じような太さのブナが根こそぎ倒れていた。根っこの前には「0メートル」と書かれたサインがあり、ロープがブナの先端まで張られている。つまりこのロープを触りながら歩くことで、30mほどのブナの高さを感じることができるのだ。

若いブナと、それを囲む壁。この壁の太さになるには樹齢300年を要する

■健常者だってもちろん楽しめる

 森を抜けると草原に出た。入り口には、「ここはバリアフリーではありません」と書かれたサインが設置されている。見ると、もともと北米原産のベイマツが植えられていた森を切り開き、自然な原生林に戻している最中とのこと。

 草原の上には、そのベイマツの丸太を使ったアスレチックがジグザグと延びている。手すりがないところもあり、結構スリルがある。リスクが高い場所だけに、オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語で「必ず自己責任で歩いてください」というサインが5個以上設置されていた。

伐採されたベイマツで作られたアスレチック。草原はいずれブナやオークの森に還る

 草原のアスレチックをクリアして、最奥の森のトレイルに入った。すると少し疲れた筆者の気持ちをわかっていたかのように、森の中におあつらえむきのベンチが現れた。

 お昼寝ベンチとでも言えば良いだろうか。体のラインにフィットするデザインなので、ついうとうとしてしまう。そしてこのベンチ、森に向いているので自分が自然の一部になったような時間を味わえる。

最高のお昼寝ベンチ