■西天狗から東天狗を渡り歩き、「八ヶ岳ブルー」を堪能する
つぎに踏む東天狗は、ここから北に連なる縞枯山や北横岳、蓼科山に続くおだやかな稜線が本当に美しい。眼下に広がる世界は樹林と雪に埋もれ、北八ヶ岳の魅力を“鳥の目”になって味わうことができる。西天狗よりやや東に位置することで、奥秩父主脈や浅間連峰、そして北関東方面の山嶺まで見晴らしが届く。
こんなにも穏やかだと、雪山の優しく美しい面ばかりに目が奪われてしまうが、ひとたび天候が崩れるとあっという間に八ヶ岳ブルーは消滅し、足元さえ見えなくなるのだから雪山は怖い。防寒装備や防風対策はもちろん大切だけれど、冬山は天候や雪質などの情報収集と早い判断がもっと大切だということも、念のため付け加えておきたい。
天狗岳というひとつの山に登りに来たつもりなのに、異なる個性の山頂が東西にわかれているために、結果として1度で2度楽しい登山になるわけだ。ちょっと得した気分になりながら北八ヶ岳に別れを告げて、中山平を経てスタート地点に戻る。
この日は終日快晴にして風は穏やか、展望は抜群。八ヶ岳ブルーもたっぷり堪能することができた。あちこちで写真を撮りながらのんびり歩いたため、気がつけばお昼を回って日が傾き始めている。その間に中山平にある黒百合ヒュッテの名物・ビーフシチューが終わってしまっていた。これをお目当てにするのなら、立ち寄り食事の提供時間内に小屋にたどり着かなければならないからご注意を。
「山と高原地図」によれば、唐沢鉱泉から西天狗、東天狗、中山平と周回する場合のコースタイムは約5時間半ほど。黒百合テュッテに立ち寄るなら1~2時間のゆとりをもって計画したいところだ。冬の太陽は足早なのだ。
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さて、後編では個人的にお気に入りの山を取り上げたいと思う。南八ヶ岳の中でも地味な存在「編笠山」だ。地味とはいったものの、八ヶ岳でも屈指の展望に会いに行く。もちろん、八ヶ岳ブルーにも。