■樹林からスタートし、なだらかな西天狗のピークへ
北八ヶ岳の魅力は原生林と水辺にある。夏なら気持ちの良い樹林歩きができるし、白駒池をはじめとした大小さまざまな水辺には数多のハイカーが憩う。それがひとたび冬になると雪に覆われ、樹林はおびただしい“スノーモンスター”の群れとなり、水辺は氷結して雪原のごとし。こういう風景の中を歩けるのが、冬ならではの北八ヶ岳の楽しみ方だ。
冬場もアクセス可能な駐車場がある唐沢鉱泉や渋の湯から歩きはじめて天狗岳を目指すコースがポピュラーで、道中はモンスターだらけの樹林を楽しむことができる。やがて森林限界を越えると西天狗のなだらかな頂に立ち、ついで東天狗の荒々しい岩のピークを踏むことになる。それぞれの山容が異なるばかりか、そこから眺められる景色までまったく違って見えるのが面白い。すぐ近くに並び立つ位置関係にもかかわらず、目にする世界は異なるのである。
西天狗は、夏沢峠から南に連なる硫黄岳、横岳、赤岳などの展望が大迫力。見渡す限りモンスターたちがうようよしている。南アルプスと中央アルプス、その向こうに木曽御嶽、そして北アルプスの眺めも本当に素晴らしい。霧ヶ峰も見下ろすことができる。見上げれば空は青く、山の上にいることで、すぐそこに宇宙があるように感じられる。