■4. 構造を知る

スキー板の構造は単純そうに見えてこうなっている

 スキー板は、ウッドの芯材にグラスファイバーや樹脂、金属素材などの補強材でカバーし、滑走面にはエッジとベース材、上にはグラフィックを載せたトップシートを重ね、それぞれのパーツに接着剤を塗ったうえで貼り合わせ、プレス機で圧力をかけて圧着させています。これがスキーの基本的となる構造です。コア材や補強材の種類や組み合わせ、形状などの選択肢は無限大で、それがブランドの個性とモデルの性能を生みだしています。

■5. 素材を知る

 スキーを手に取ってセンターを押し込んでみると滑らかなアールを描いてたわみ、離すと元の形に瞬時に復元します。スキーにとって重要なこの性質は主に芯材の働きによるもの。長くて薄く、折れやすい芯材の強度を補いつつ、なおかつ張りの強さや粘り気、復元力、振動吸収性といったスキーの性能や乗り味を左右する要素をバランスさせるのも補強材の重要な役割となっています。このコア材と補強材を中心に、厳密にはトップシートやサイドウォール、ベース材やエッジ材も含めて、どんな素材をどう組み合わせるのかが、現代スキーのキーテクノロジーなのです。

●芯材

 ジュニア用やエントリーモデルなどを除いて、スキーの芯材は木材が主流です。良質のスキーに必要なしなやかな反発性や滑らかなたわみ感を出すには、ウッドコアに勝るものはありません。当然、木の品種や部位、品質がスキーのスペックを左右しますが、木材の堅さや軽さがそのままスキーに反映されるわけではなく、積層の組み合わせ方が重要になります。

木材が主流の芯材

●補強材

 ウッドコアの補強材として最も多く使われている素材は、加工がしやすくしなやかなグラスファイバーです。その他、カーボンは軽量で反発の強く、チタナールはチタンとアルミの合金で振動吸収性に優れます。それぞれ使い方によってはマイナスな面も持ち合わせる先端素材をどう生かして使うか、これが現在各ブランドが技術力を結集している点なのです。

補強材の多くはグラスファイバー製

 また、ウッドコアのほとんどは積層材で、異なる素材を組み合わせることでしなりや強度を調整しています。カーボンなど先端素材をストリンガーとして挿入する例も少なくありません。

■6. サイド構造を知る

 スキーの構造でよく耳にするのが、サンドイッチかキャップかという話かと思います。あるいは両者をミックスしたセミキャップ構造もあります。実はこのサイド構造の違いがスキーの性能や乗り味に与える影響はごく僅かなものでしかなく、構造が異なる大きな理由はあくまでも製造上の事情。ひとことで言えば、キャップ構造は大量生産に向いていて、それなりの技術が必要なサンドイッチ構造は大量生産が難しいという点が挙げられるでしょう。

サンドイッチ構造
セミキャップ構造
キャップ構造

監修=秋庭将之(VECTOR GLIDEプロデューサー)、イラスト=鎌倉スキーヤー

 

【BRAVOSKI 2022 Winter Vol.1 より再編集】