不安定な天候に悩まされた夏だったが、高い山では秋が訪れようとしている。先週末から今週にかけて、ガイドや撮影で歩いた北アルプス・槍ヶ岳の状況をお知らせしたい。
■山はすでに秋の気配
週末の上高地は観光客と登山者で賑わってはいたが、例年ほどの混雑はない印象だ。外国人の姿も見かけることがほとんどなく、小梨平から先は人影もまばらになっていく。梓川に沿った登山道は景色こそ夏のままだが、盛夏の暑さはすでに去り、程よい気候で歩きやすい。
■修復された登山道
横尾から先の川沿いのルートでは、激しい雨で登山道が流された箇所があったが、しっかりと補修されているので安心だ。その他、槍沢ルート全体を通して、大きく変化しているところはなかった。
ルート上の各山小屋にも立ち寄ったが、新型コロナへの対策も工夫を凝らされている。宿泊は完全予約制となっており、余裕のある対応で登山者を迎えていた。
■秋の花が最盛期!
長い槍沢ルート、真夏の炎天下では暑さがかなり堪えるのだが、この時期になると沢を吹き抜ける風が冷たく心地いい。休憩時など、少し動かないでいると肌寒さを感じるほどだ。
登山道を包むように咲く花々は、夏の花はもうわずかに咲き残っているだけ。ところどころにハクサンシャジンやハクサンフウロがひっそり咲いていた。
「大曲」を過ぎ、「天狗原」への分岐付近では、秋の訪れを告げる花々が斜面を彩っている。ミヤマトリカブト、サラシナショウマ、オミナエシ、ミヤマセンキュウ……。夏の終わりを惜しむように咲き乱れていた。
「播隆窟(ばんりゅうくつ)」より上部、森林限界を越えた標高では、花を落とした高山植物たちが緑から黄色へと徐々に色づき始めている。もうすぐ草紅葉が見頃となるだろう。そんな中でもミヤマアキノキリンソウ(コガネギク)が黄色く輝き、ガレ場にはトウヤクリンドウの花が開こうとしている。岩の隙間にはイワギキョウやイワツメクサが元気に花を咲かせていた。穂になったチングルマも風に揺れている。
夏から秋へ季節は着実に進んでいる。山岳地帯での紅葉は、険しい岩稜とのコントラストが華やかだ。順調に冷え込み、台風などの被害が出なければ、今月末にはきっと素晴らしい彩りを見せてくれるだろう。