登山に必要な一切を背負って登り、山の息吹を感じながら過ごすのがテント泊登山だ。厳しい環境ならではの迫力ある景色の中で、地面に張ったテントから伝わる山との一体感。一度経験すると病みつきになる魅力がある。
■写真撮影にうってつけのロケーション
苦労して登っただけに、テントを張ったらあまり移動せずにのんびりと過ごしたい。面倒くさがり屋の僕はそう思ってしまう。テントサイトは眺めのいい場所で、山の見映えもよく、いつでも写真を撮れる場所がいい。せっかくならテントも画面に入れて、光や天候で変化し続ける山の表情を捉えたい。そんな要望をかなえてくれる場所のひとつが、槍ヶ岳山荘のテン場だ。映える槍ヶ岳がちょうど目の前に そびえ立ってる。
■おすすめは槍ヶ岳側。悪天候にも強い
ここのテン場は大きく分けて槍ヶ岳側(北向き)と中岳側(南向き)のサイトになる。僕の好みは断然槍ヶ岳側だ。テントを入れながら槍ヶ岳も撮れる絶好の撮影スポット。夏の夜明けは早い。眠たい目をこすりながら、槍ヶ岳と朝日をテントにいながら撮影できるのは最高の贅沢だろう。
逆に槍ヶ岳山荘から撮っても画になるので、ぜひ試してもらいたい。イメージがガラリと変わって一粒で二度美味しい。
なかでも大岩の陰のサイトは、雨や風をかなり防いでくれて悪天候時にはありがたい。こちら側の多くは、狭いがサイト間の岩が衝立になっていてプライベート感もある。ソロやカップルで静かに自分の時間を過ごすのに最適だろう。
■サイトは早い者勝ち。スタート時間が勝負の分かれ目だ
テントサイトは自由に選べるが先着順になる。当然早く到着した方が有利なのだが、先客が連泊している場合もあるので、そればかりは運。ここまで来るとなると、ほとんどの人は前夜にどこかルート上のテン場で一泊しているはず。前泊したテン場から素早く撤収、可能な限り早立ちすることが、好みのサイトにテントを張れるチャンスにつながる。
10年くらい前に雑誌で紹介したら、その影響からか、急にこの部分から埋まるようになった気がする。本音を言えばあまり紹介したくなかったのだが・・・ また競争率を上げてしまったのかもしれない。
■広く開放感がある大喰岳側のサイト
南側のサイトも決して悪い訳ではない。地形を生かして階段状になっており、テントを張れる数は圧倒的に多い。一区画も広めの場所が多く、大きめのテントはこちらがおすすめだ。パーティーで何張りかテントを立てるのにも向いている。
天気さえ良ければ開放感があって気持ちいい。日当たりもいいし、夕食後、西日に照らされる大喰岳の荒涼とした山容を眺めながら飲むコーヒーは格別だ。
モデルルート:上高地BT-横尾山荘-槍沢キャンプ場・ババ平(泊)-槍ヶ岳山荘-槍ヶ岳山頂往復-槍ヶ岳山荘テン場(泊)-同ルート下山