前回は、なんだかどんでん返しの回となってしまいました。あれだけ山小屋をはじめると意気込んで騒いでおいて、お恥ずかしい限りです。でも、これも私の人生らしい。

 準備から何から仕切り直して、これから1年間、山小屋を作っていく過程をお伝えすべく、書かせていただきます。引き続きよろしくお願いします。

■日本のアルプスについて少々

光岳山頂にて

 日本の真ん中には、日本海から太平洋までを縦断するかのように3,000m級の山々が連なっているのは、皆さんもご存知のお話。北から順に北アルプス(飛騨山脈)、中央アルプス(木曽山脈)、南アルプス(赤石山脈)が並び、それらは「日本アルプス」、別名「日本の屋根」なんて呼ばれている。

 その日本アルプスの一番南側、太平洋に近い温暖なところに連なる山々が南アルプスで、その最南端の山が光岳(てかりだけ。標高は2,591m)。わたしが山小屋をはじめようとしている光岳小屋は、この山頂から少し離れた稜線上にある。

 かの有名な、深田久弥さんが百名山の一座に入れてくれたおかげか、なんとなく聞いたことはあるけれど、なんて読むの? ひかりだけ? という会話を耳にする。アクセスの悪さ(東京から登山口まで5時間。登山口から山頂まで7時間半)から、百名山の踏破を目指す方々の中には光岳が最後に残る人も多いようだし、山頂の地味さから「絶望のテカリ」と呼ばれていて、くすりと笑ってしまった。

 こんな言われようで、大丈夫か? と心配になってしまう。でもそういう場所、わたしは嫌いじゃないぞ。