東京暮らしのハイカーが関西屈指の人気低山エリア「六甲」に日帰りハイクすることはできるのか。そんな疑問(というか期待)に応えてくれるおすすめが再度山(ふたたびさん)だ。午前中に新神戸駅に舞い降りて歩き出し、昼食を池の畔でとり、夕景を眺めてから下山して、夜の新幹線でゆるりと東京に戻る……。

 日帰りでも時間的な余裕を持った山行計画が組めて、万が一の時に途中離脱できるエスケープルートも豊富な、理想的な低山だ。

「週末は山梨あたりですか?」

「関西だよ」

「山小屋泊?」

「いやいや、日帰りで」

 こんな会話がさらっと成り立つ、鮮やかなる東京―神戸間の日帰りハイク。関西だよ、の部分には奥多摩とか丹沢とかが入る軽めのノリで返事をすることができる。せっかくなら泊まりたいという気持ちもあるけれど、土日の両日を登山に費やすことができない人もいることだろう。そんなとき、新神戸駅と再度山の奇跡的な位置関係が、忙しない現代ハイカーのわがままを叶えてくれると知っておいてほしい。

 とはいえ、明るいうちに行動終了するために気をつけておきたいポイントや、見逃すには惜しい寄り道スポットは、あらかじめ知っておきたいところ。低山とはいえ道迷いや準備不足で痛い目に遭わないよう、下調べはしっかりしたい。

■六甲山地の中でも見どころ満載のブラボーマウンテン「再度山」

修法ヶ原池の畔に建つかつてのボートハウス。いまは1Fにカフェがある絶好の休憩スポット

 ひと口に「六甲」といっても、実はめちゃめちゃ大きい。神戸市中心部の北側にずどーんと横たわる巨大な山塊で、正確には「六甲山地」という。なんと、いくつかの山々が立ち並んでいる集合体なのだ。

 たとえば、西は須磨アルプスから東は宝塚市の岩倉山あたりまでを踏破する42kmほどのコースは「六甲全山縦走路」と呼ばれ、関西圏のハイカーによく歩かれている。その行程の中で一番高い地点が六甲山だ。標高931mで、六甲山地の最高峰でもある。

 日本三大夜景「掬星台(きくせいだい)」でその名を知られる摩耶山も、六甲山地を構成する代表的な一座。ロープウェイが活用でき、山上に大きな屋根の休憩所があることで、ここで山ごはんを楽しむためにやってくるハイカーはとても多い。

 しかし東京から日帰りハイクする今回の舞台は、そんな六甲山地の中でも比較的ゆるやかなハイキングが楽しめる再度山。その名を“ふたたびさん”と読む意味深な山だが、もしかしたらあなたも虜になり、何度も導かれることになるかもしれない。