話題の製品をピックアップし、当人だからこそ知る誕生秘話やこだわりについて、職人やデザイナー本人に書きつづってもらう新連載「behind the Products」。
記念すべき第一回に登場するのは、フォトグラファーとしても活躍する「ペレグリン デザイン」代表の見城了さんです。先日発売されたばかりの、美しき夏の必需品が生まれた背景、製作過程について書いていただきましょう。
■暑い時期の定番モデル「モスキートコイルホルダー」

みなさん、こんにちは。「ペレグリン デザイン」の見城と申します。「ペレグリン デザイン」とは、都内をベースに、キャンプなどの外遊びで使う雑貨や家具を作っているブランドです。折り畳んだり組み立てたりできる、主に天然木や合板で作られた機能的な家具やギアを展開しています。
我々のラインナップの中でも、特に暑い時期になると人気なのが「モスキートコイルホルダー」。木のベースプレートにステンレスの金具を組み合わせた、これまでにない新しい発想の蚊取り線香ホルダーです。宙に浮いたように蚊取り線香が取り付けられるデザインで、機能性はもちろん、見た目も楽しんでいただけます。
■プロダクトが生まれた経緯は…
私はホームセンターが好きで、月に数回のパトロールがルーティンになっています。数年前に某ホームセンターのネジのコーナーを見て廻っていたある日、このカラビナ付きのステンレス製金具を発見しました。「なんだ、これは? なにかに使えそうだな」と買って帰ったのが、製品の始まりです。
この金具がすごいのは、丈夫できれいなステンレスのボルトの先にカラビナが付いていることと、ワッシャーまでねじ切りがしてあってそれ自体が止め具として機能することです。個人的には、このワッシャーだけでも売って欲しいくらい。
当時、丸い木のお皿をすでに製品化していたので、そのお皿に金具を組み合わせて作ってみたのが、この「蚊取り線香ホルダー」でした。

今年の夏はベースプレートに新しい素材を採用したモデルも作ってみたので、その製作過程をレポートしてみます。
製作を依頼したのは、青梅や所沢を拠点にして活動している「Ten Artworks」さん。廃棄されたスケートボードのデッキを張り合わせた積層材を使って、特別な作品を手掛けている工房です。今回は素材の持つ縞模様を生かし、工芸品のように美しいホルダーのベースプレートに仕上げてもらいました。

そもそも、この着想を得たのは、昨年の冬のこと。知人づてに、Ten Artworksの佐藤さんを紹介していただいたことがきっかけでした。「素材を自ら作り出して、面白いことをやってる人がいる」と言われてずっと気になっていたのですが、なかなかタイミングが合わず、やっと工房へ行くことができたのは春先でした。
工房を見させてもらったり、いろいろな話をする中で「なにか一緒に作れたらいいね」という話の流れで拝見したのがこの素材です。その場ですぐ、「これで蚊取り線香のホルダーを作ってみましょう」と話がまとまりました。
お会いするまでは時間がかかりましたが、そこはお互いものを作っているクリエイター同士。お話をしてイメージを共有するのに時間はかかりませんでした。