■空気が波打つ! 山があることでできる「山岳波」の雲

山岳波によってできる雲の概念図

 吊るし雲や笠雲は、上空の風が山にぶつかることによってできる。上の図で分かるように、水蒸気を含んだ湿った風が吹いてきて、山に当たり斜面を上昇すると、山頂付近で水蒸気が凝結し、雲ができる。これが笠雲だ。山を越えた湿った風は、風下側で波を打ち続け、一定の高度以上に吊るし雲ができる。この気流の波は「山岳波」と呼ばれる。

 吊るし雲や笠雲ともに、上空の風が強く、空気が湿っているときにできるため、どちらも天気が悪化する前兆といわれる。アウトドアを楽しむ人は覚えておくといいだろう。

■山肌から雲が生まれている! 山頂にはためく「旗雲」

山の片方の斜面で発生する旗雲。五竜岳付近。撮影:杉村航

 もうひとつ、山があることで見られる雲を紹介しよう。写真のように、片方の斜面に旗のように見える雲、これは「旗雲(山旗雲)」と呼ばれる。まるで山肌から雲が生まれているようなので、ずっと見ていると不思議な気分になる雲である。

旗雲は、上空の風が強いときに風下側で発生する

 上空で強い風が山に吹きつけているとき、風下側では、この強い風に吸い上げられた乱気流が生まれる。これによってできるのが旗雲だ。 つまり、旗雲が発生しているのは山頂付近の風が強いとき。また、風下側には乱気流が発生しているので登山の際には注意したい。

 ちなみに日本一高い富士山では、山頂付近は風がかなり強くなることも多く、風下側で発生した乱気流によってジェット機が墜落したこともある。当然、人間などは軽々と飛ばされてしまうほどの風で、富士登山の滑落事故の原因となることもある。

 このような風の流れは、晴れて空気が乾燥しているときには雲が発生しないので分かりにくいが、空気が湿っていて雲が発生すれば「風の動き」を目に見える形にしてくれる。雲をぼんやりと眺めているだけでも楽しいけれど、ぜひ雲の形や動きに注目し、風の向きや強さを想像してみてほしい。

 五感のセンサーを働かせて、自然からのメッセージを感じとるきっかけになりましたか? 歩きながらの観察はアブナイので、くれぐれも空を見上げるときは足を止めてくださいね。