今や全国各地に「道の駅」と名乗る施設が多数ある。様々なアウトドアへ出かる際、ドライブ中にお世話になっている方も多いだろう。トイレに、食事に、仮眠に、買い物にと何かと便利な存在だ。

 では、その定義をご存知だろうか? 「道の駅とはなんなのか?」という疑問を抱きながら、ウヤムヤにしている人も少なくないのでは? その疑問を解明する前に、まず高速道路には通常は、24時間利用できる休憩スポットとしてSAやPAが整備されているということを前提として確認したい。

石川県の旧輪島駅の跡地にある道の駅「ふらっと訪夢」。鉄道駅の面影を残している

■「ドライブイン」しかなかった一般道の休憩スポット

 70年代に大ヒットした映画『トラック野郎』シリーズ(東映)には毎回、主人公(菅原文太)らトラックドライバーの憩いの場所として「ドライブイン」が登場していた。以前は、一般道をドライブ中の休憩所の役割を、そのような「ドライブイン」と名乗る施設や沿道の飲食店が果たしていた。「ドライブイン」は今も存在するが、しかし、それらの多くが店内での飲食が前提で、トイレだけの利用はしづらく、駐車場にクルマを停めて仮眠する場所でもなく、24時間営業とも限らなかった。つまり、高速道路に比べると、一般道、特に地方の山間部などにはドライバーが休むため環境が充分ではなかったのである。

 この背景が「道の駅」誕生につながっている。つまり、一般道におけるドライバーの休憩スポットとして着想されたものなのである。その定義は、国土交通省(当初は建設省)により登録された、「休憩施設と地域振興施設が一体化された道路施設」を指す。「道の駅」はいわば、国のオフィシャルブランドなのだ。

「道の駅ましこ」は焼き物で有名な栃木県の益子にある。栃木県産の豚肉がレストランの自慢

■正式デビューは1993年で、今や全国に1000施設以上ある

 普及したのは90年代になってから。1991年10月から翌年の7月にかけて、栃木県、岐阜県、山口県の計12か所で「道の駅」のテスト的な施設が営業された。正式に現在のような形でのスタートは1993年で、全国103施設が産声をあげている。その後、「道の駅」のブランドは定着。なかでも地域農産品、特産品の販売は人気を呼び、温泉施設を有する施設も増えたことで、「道の駅」自体が観光地における目的地のひとつとなる現象も生まれた。2022年2月の時点で全国に1200近い「道の駅」が登録されている。

 「道の駅」の広がりに伴い、「山の駅」「森の駅」「里の駅」「丘の駅」「村の駅」を名乗る、同様の施設も全国に続々と誕生している。これらには、公的機関によるオフシャルなブランドである場合と、民間施設の屋号である場合の両方がある。たとえば、「里の駅」は大分県が、“里めぐりの拠点”として登録したものである。

宮崎県日南市にある「道の駅なんごう」は、宿泊施設と、八戸市南郷地域の文化・味覚・風土を体験できるスペースを併設