東北には紅葉の名山が数多くあります。なかでも、「東北で一番おすすめの紅葉の山は?」と聞かれたら、私は迷わず「焼石岳(やけいしだけ)」と答えます。
秋田県と岩手県の県境にある焼石岳は、近くの秋田駒ヶ岳などと比べると、知名度は少し控えめです。その分、紅葉が見頃の時期でも比較的落ち着いて歩ける穴場なのです。
◼️アクセスは少し大変だけど歩きやすい
今回紹介するのは、中沼登山口から山頂を往復する日帰りルートです。
コースタイムは約6時間、距離は約12km、累積標高差は約900mと、距離のわりに標高差はそれほど大きくなく、急登ばかりが続く山ではありません。紅葉を楽しみながら、1日かけてゆっくり歩きたい人にもおすすめできるコースです。
アクセスは、最寄り駅の東北本線・水沢駅から中沼登山口に向かう公共交通機関がないため、基本的にマイカーかタクシーとなります。登山口の手前数kmが未舗装路になります。路面状況を確認しながら、慎重に走りましょう。駐車スペースは40台ほどと限りがあるので、土日は特に早く着くようにした方が無難です。
◼️天気予報とにらめっこして迎えた一日
秋の東北は、たとえ天気予報が晴れでもガスが出やすく、山頂に着いたら真っ白ということも珍しくありません。私自身、そんな経験を何度もしてきました。
そのため、焼石岳へ行く計画を立てていた時は、何日も前から天気予報を確認していました。そして、直前になって「この日なら登れそう」と思えたのが金曜日でした。そこで、その日は有給をとり、週の前半に仕事を一気に終わらせて山に向かいました。かなり仕事を詰め込むことになりましたが、そのくらい焼石岳の紅葉が見てみたかったのです。
ルートの注意点としては、渡渉箇所もあるため、雨の後はスリップやぬかるみに気をつけて歩きましょう。そして、秋山は日暮れが早いので、できるだけ早出早着を心がけることです。クマ対策も怠らないようにしましょう。
◼️歩き始めてすぐ確信した「今日は当たりの日」
朝6時半ごろ。空には雲ひとつなく、登山口から40分ほどで辿り着く中沼の鏡のような湖面には、焼石岳が映り込んでいました。その山肌は、すでに赤やオレンジに色づいています。
「あ、今日は当たりの日だ」
早くも、そう思わされる景色でした。私は歩くことを忘れ、しばらく見入ってしまいました。
◼️避難小屋を過ぎると、一面の紅葉が広がる
中沼からさらに1時間半ほど歩くと、立派な銀明水避難小屋が現れます。
今回は日帰りだったので立ち寄りませんでしたが、小屋の近くにはトイレと水場があって便利です。冷たい湧き水でひと息ついてから再出発しました。とてもおいしい命の泉です。
ここから上が焼石岳の見どころ、まさに楽園です。視界が一気に開け、高い木が少なくなります。山頂を見上げながら登っていきますが、傾斜はそれほどキツくはありません。
東北の山は厳しい冬の風雪の影響で、標高がそれほど高くなくても、開放的な景色が広がる場所が珍しくありません。さらに、昼夜の気温差が大きいため、紅葉の色づきも非常に鮮やかなんです。
東北の秋山で、ここまできれいな青空に恵まれたのは初めての経験でした。
赤、黄色、オレンジ、そして濃淡の異なる緑。色とりどりの山肌がどこまでも続き、何度も足を止めて写真を撮ってしまいます。これだけでも、都内から頑張って運転した甲斐がありました。
例年、10月の第1週目前後が紅葉の見頃らしいのですが、私が登ったのは10月3日でした。年により、見頃の時期は前後するので、出発前に最新の紅葉情報を忘れずにチェックしてみてください。