秋風が心地よくなると、山々は一気に色づき始める。今回紹介するのは、登山者を魅了してやまない、中央アルプスの木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ・標高2,956m)。

 その懐に抱かれた「千畳敷(せんじょうじき)カール」は、日本屈指の紅葉の名所として知られ、天空の紅葉スポットまでロープウェイで一気にアクセス可能だ。

 色とりどりに染まる天空の楽園ハイキングと、スリリングな岩稜帯に挑むステップアップルート、そして絶滅から復活したライチョウとの出会いまで、レポートする。

■ロープウェイを降りてすぐ広がる、天空の紅葉スポット「千畳敷カール」

 この日の木曽駒ヶ岳への旅は、麓の「菅の台(すがのだい)バスセンター」からスタート。中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイのしらび平駅までの道はマイカー規制があるため、車を停めバスに乗り換える。「しらび平駅」まではバスで約30分、そこから標高2,612mの「千畳敷駅」までロープウェイで約7分だ。

 菅の台バスセンターには約300台駐車できる広い駐車場があるが、紅葉シーズンの木曽駒ヶ岳を舐めてはいけない。筆者はまだ暗い平日の夜中、2時頃に到着するも駐車場は半分以上埋まっていた。

 6時頃の始発バスに乗るため、2時間前からバス待ちの列に並ぶ。満員となり発車していくバスを見送ること3台、いよいよバスに乗車して「千畳敷駅」を目指す。

 千畳敷駅から出ると、ひんやりとした山の空気とともに、視界に飛び込んできたのは燃えるような赤と黄色の世界だ。思わず息をのむ絶景に、周囲からも歓声があがる。「これが、秋の千畳敷カールか」思わず声が漏れた。ナナカマドの燃えるような赤や黄色く染まる草木、ハイマツの深い緑がパッチワークのように織りなす景色は、まさに「天空の庭園」。荒々しくそびえる岩肌のコントラストが、さらに美しさを引き立てる。

 撮影スポットから写真を撮っていると、あっという間に30分が経過。「帰りも来るから」と自分に言い聞かせ、木曽駒ヶ岳に向かって出発した。なお、千畳敷駅周辺は、1周約45分で散策できる遊歩道やカフェ、ラウンジが整備されているので、千畳敷カールの観光だけでも十分に楽しめる場所だ。

千畳敷駅から出ていきなり絶景が広がる
千畳敷駅前の撮影スポット

■紅葉の千畳敷カールを越えて、木曽駒ヶ岳へ

 千畳敷駅から木曽駒ヶ岳の山頂までは約1時間45分。ロープウェイで上がってきた分、高所からのスタートとなるうえ、下から見上げる分には絶景だった千畳敷カールが、標高差225mの急登となって立ちはだかる。スタート直後のこの800mほどの区間が一番きついので、登り始める前に水分補給や準備運動を忘れずに。

 急な登り坂をジグザグ曲がりながら、ときおり絶景に元気をもらいながら、ゆっくり標高を上げていくと稜線の分岐点「乗越浄土(のっこしじょうど)」に到着した。振り返れば小さくなったロープウェイ駅、周りを見渡せば中央アルプスの山並みが広がっていた。

 ここから先は比較的緩やかな稜線を進み、途中のピーク「中岳(なかだけ・2,925m)」を越えれば、木曽駒ヶ岳の山頂までは約30分。山頂からは木曽駒ヶ岳から延びる中央アルプスの山々や、北アルプス、南アルプスなどが一望できる。

立ちふさがるようにそびえる千畳敷カールを登る
中岳から見る頂上山荘と木曽駒ヶ岳。奥には御嶽山が見える
木曽駒ヶ岳山頂から延びる稜線。奥には北アルプスが見える