梅雨の週末、登山に行くべきか迷う。「景色は期待できない」「足元も悪そう」と、計画を見送ってしまう人も多いはずだ。

 だが、そんな時期こそおすすめしたい山が、長野県富士見町に位置する「入笠山(にゅうかさやま・標高1,955m)」だ。6月には120万本のスズランをはじめとした花々がピークを迎える。ゴンドラで標高を稼げるアクセスのよさも魅力だ。

 本記事では、実際に歩いて見えてきた楽しみ方を紹介する。

■いざ、梅雨の入笠山へ

 6月中旬、「入笠山のスズランが満開」というニュースを見た筆者は、入笠山を目指した。今回は「すずらん山野草公園」から「入笠湿原」、「入笠山登山口の花畑」を通って入笠山山頂を目指すコース。

 登山口まではアップダウンは大きくないが、その先は急登も続く。動いているうちに暑くなったり、天気の変化で急に気温が下がったりするのでウェアのレイヤリングで調整したい。

 この日は、曇りではあったが、朝露や霧に備えて、撥水性の長袖シャツとズボンを着用した。雨が降り始めたらすぐに着られるように、レインウェアはリュックの一番上の取り出しやすい場所に収納。

■登山前から見どころが続く「すずらん山野草公園」

 スタートは登山やマウンテンバイク、スキーなどが楽しめるアウトドア施設「富士見パノラマリゾート」のゴンドラ。約15分の空中散歩を楽しみ、標高1,780mの山頂駅に降り立つと、そこには「すずらん山野草公園」が広がる。

 まず出迎えてくれるのは、約20万本の「ドイツスズラン」。可憐な白いベル型の花が揺れ、甘く爽やかな香りが漂う。スズラン畑の向こうには八ヶ岳の山並みがそびえ、可愛らしい花々と荒々しい山容が織りなす景色に目を奪われる。すずらんだけで満足できてしまうほどだが、ここにはまだ希少な花たちが控えている。

スズラン花畑の向こうには八ヶ岳がそびえる

 特に注目すべきは、「釜無ホテイアツモリソウ」。“野生ランの王様”、“幻の花”とも称される花で、ぷっくりとした袋状の花びらが特徴。独特なフォルムと深い赤紫の色合いは、高貴な芸術作品を思わせ、思わず息を呑む圧倒的な存在感がある。絶滅危惧種にも指定されている。 

 さらに園内を回ると、小さく愛らしい「イチヨウラン」や、こちらも独特な形状の「クマガイソウ」など、様々な花が咲き誇る。登山開始早々、これほど多様な高山植物を一度に見られる環境は、入笠山ならではの贅沢だ。

存在感のある“野生ランの王様”「釜無ホテイアツモリソウ」
長野県の準絶滅危惧種「イチヨウラン」
独特な花の絶滅危惧種「クマガイソウ」

■霧に包まれる幻想的な美しさ「入笠湿原」

 公園を抜け、なだらかな道を10分ほど歩くと、視界がパッと開け「入笠湿原」へと出る。6月の入笠湿原の主役は、斜面を埋め尽くす「二ホンスズラン」。その数、なんと100万本!「ドイツスズラン」と違い、葉の下に隠れるようにひっそりと咲くのが日本すずらんの特徴だ。派手さはないが、その奥ゆかしさに日本らしさを感じる。

 また、湿原を彩るのはスズランだけではない。小ぶりな白い花を枝いっぱいに咲かせる「ズミ」の木々、周りには鮮やかな黄色の「ウマノアシガタ」が風に揺れ、湿原に色を添える。入笠湿原を歩くと、静かで落ち着いた美しさに心が洗われるようだ。

 湿原は木道が整備されているが、雨天時は滑りやすくなるため足元には注意したい。防水性のある登山靴や滑りにくいソールのシューズがあると安心だ。

二ホンスズランは葉の下に隠れるようにひっそりと
湿原を彩るズミの木とウマノアシガタ