新潟の海沿いに佇む里山、角田山(かくだやま)。標高481.7mという親しみやすい低山に、雪国ならではの“濃密な春”が詰まっている。雪解けとともに一斉に咲き出す、儚くも力強い命 ―― 雪割草、そしてカタクリ。わずかな期間しか出会えない“春の妖精たち”を求めて、今日も多くの登山者がこの山を訪れる。そういう私もずっとこの3月中に訪れたいと憧れていた一人だ。

■雪割草が教えてくれる春のはじまり

元気いっぱいに咲く雪割草

 雪の下でじっと春を待ち、雪解けとともに顔を出す花、雪割草。日本海側の多雪地帯に多く自生する。角田山では3月上旬から咲き始め、中旬にかけて見頃となる。厳しい冬を越えてきたからこその強さも感じる。

朝の9時に登山口に到着。いよいよ登山スタート!

 朝の空気は、まだまだ冷たい。春になりきれない風の中を歩きながら、私は角田山の登山口に立っていた。今日の目的は、頂上じゃない。足元に咲く、ほんの小さな春に会いにいくこと。

 歩き出してすぐは、正直なところ不安になる。「本当に咲いてるのかな」「ちょっと早かったかも」そんなことを考えながら、落ち葉の道をゆっくり進む。でも15分後。ふと足元にしゃがみ込み、目線を落として出会えたのが白い雪割草だった。

暖かい時間になると花びらも大きく開きはじめた

 奥へ奥へと進むと「あ、ここにも」「こんなところにも!」さっきまでただの登山道だった場所が、一気に“お花畑のフィールド”に変わる。気づけばなかなか前に進めない。

 歩く → 見つける → しゃがむ → 写真を撮る

 その繰り返し。むしろ、立ち止まるたびに、とても楽しく、この山の魅力が深くなっていった。

■目線を上げて気づいたこと

視界を遮らないこの季節だけ海が現れる

 ゆっくりゆっくり標高を上げると、景色がまた変わる。山頂あたりで目線をあげると広がるのは、海と佐渡島だ。足元ばかり見ていて気づかなかったが、まだ葉のない樹々の隙間から真っ青な海が見えた。「ふぅ……」と、お花に夢中になっていたが遠くの景色を見ながらひと休み。

 下山もお花がたくさん咲いているコースを降りたいと思う。角田山には複数の登山ルートがあるが、花を楽しむなら海側のコースが人気だ。青い日本海と春の花のコントラストが楽しめるのも、この山ならではの魅力だろう。