■ヨコヅナサシガメの食性
次にその生態に注目してみよう。
カメムシというと「農業害虫」のイメージが強く、果物や野菜につくイメージがある。ところが、サシガメは”肉食性のカメムシ”だ。その鋭い口器で獲物を突き刺し、その体液を吸う習性を持つ。
ちなみに、ヨコヅナサシガメは危険を感じると、この口器で人を刺すことがある。ヨコヅナサシガメの主な獲物は他の昆虫やクモなので、積極的に人を刺すことはない。しかし、掴まれたりすると防衛反応で刺してくることがある。あえて触らない限り、刺される心配はほぼないのだが、気付かずにうっかり掴まないように注意が必要だ。
■ヨコヅナサシガメの越冬
ヨコヅナサシガメは、特に冬に見つけやすい。その理由は、サクラやエノキなどの”身近な樹木で集団越冬するため”だ。
それにしてもなぜ、ヨコヅナサシガメは冬を集団で過ごすのだろうか?
その理由は、冬の寒さと乾燥から身を守るため。多数の個体が身を寄せ合うことにより、暖を取りつつ湿度を共有しているのだ。
じつはヨコヅナサシガメに限らず、集団越冬する昆虫は多い。屋内に侵入するカメムシやテントウムシも多数が一か所に集まって冬を越える。多様な虫たちがこうやって冬を越えているのだから、シンプルではあるが有効な手段なのだろう。
ところで、冬に見るヨコヅナサシガメの外見は、先ほど紹介した姿とは少し違う部分がある。赤い色の部分が多くなり、力士の化粧まわしも目立たなくなる。
このような違いがある理由は、冬に見るヨコヅナサシガメは「幼虫」であるため。昆虫は種によって越冬形態(幼虫、さなぎ、成虫など)が異なる。ヨコヅナサシガメは「幼虫越冬」タイプで、幼虫の姿で越冬した個体は春〜初夏頃に脱皮して成虫の姿になる。
ヨコヅナサシガメが集団でいる様子は、冬だけでなく3〜4月頃まで見ることができる。もし公園などで集団越冬しているところに出会ったら、今回紹介したユニークな姿と生態を思い出しながら観察してみてほしい。