冬の始まりを告げるように各地で降った雪ですが、ここに来て暖かい日が続いています(12月24日現在、その後寒気が入って積雪が増えました)。過ごしやすい反面、雪の量が心配になってきています。やきもきしているスキーヤー、スノーボーダーも多いでしょう。整備されたスキー場のゲレンデ滑走以上に積雪が欲しいのが、山に登り雪に覆われた斜面を滑るバックカントリースキーです。

 その人気のエリアのひとつである白馬エリア。長野県小谷村にあるスキー場「つがいけマウンテンリゾート」の上部には、栂池自然園や白馬乗鞍岳があります。一帯の雪山を目指して、海外からのゲストも含め数多くのバックカントリー愛好者が訪れます。

 広大なフィールドにはバリエーションに富んだ斜面がいくつもあり、滑走の魅力にあふれていますが、毎年遭難事故が発生するのも事実です。筆者にとっては登山道整備や各種の山仕事で頻繁に入るフィールドのひとつ。自身もここでバックカントリースキーを楽しむと同時に、遭対協の一員として救助に赴くこともあります。シーズン始めの状況と、この時期にとくに留意したい点をお伝えします。

■まずは足慣らし! スキー場上部「栂の森ゲレンデ」で快適滑走

スキー場最上部の栂の森ゲレンデは、絶景に向かって気持ち良い滑走が楽しめます

 麓はかなり積雪が減っていましたが、それでもスキー場のベース部まで滑走可能でした。ゴンドラリフトに乗り込みスキー場上部を目指します。標高が上がるにつれ、目に映る景色はどんどん白い面積を増やしていきます。

 まずは足慣らしで「栂の森ゲレンデ」での滑走を楽しみました。標高の高いスキー場最上部からは、一見するとトップシーズンのような景色が広がっています。圧雪車で整えられたバーンはしっかりと締まっており快適です。2本だけ滑って山に向かう予定でしたが、ついもう1本追加してしまいました。

 スキー場のパトロールスタッフがクローズ中の非圧雪コースの整備をしているのをリフトの上から眺めていましたが、整備されていない雪上はかなり足元が悪そうです。

※クリスマス直前に訪れたので、ちょうど積雪が一番減っているタイミングでした。しかし天気は素晴らしく、風もなくてゲレンデ滑走も山歩きも快適な一日でした。

■のんびりと景色を楽しむ「栂池自然園」の絶景と癒しのひととき

林道を栂池ロープウェイの山頂駅、栂池自然園を目指して歩きます。白く覆われた斜面は白馬乗鞍岳です

 さて、足慣らしを終えたら、いよいよ入山します。スキー場上部から栂池自然園を結ぶ「栂池ロープウェイ」は、まだこの時期は運行していません。その間を結ぶ林道は圧雪車で雪が踏み固められていますので、それを利用して上がっていきます。

 様子を見ながら歩いていきますが、周辺の斜面は雪には覆われ、細かい木々や笹が顔を出しており、まだ積雪は十分ではなく、滑走どころか登高するライン取りにも苦労するような状況でした。沢も開いており、音を立てて流れる水面が見えます。

 当初は白馬乗鞍岳の一段下にある天狗原(てんぐっぱら)までを目的地にしていましたが、苦労するだけでいいことはなさそう。無理して突っ込めば、要らぬトラブルに陥りリスクが高そうです。栂池自然園の景色を眺めてお茶を楽しむことにしました。

広大なスケールで白い雪原が広がる栂池自然園。山々の眺めも素晴らしい。こんな平和そうな場所ですが、視界不良時の道迷いなどの遭難事故もあります

 到着した自然園は、積雪量こそ少ないものの広大なスケールで白い雪原が広がっていました。小蓮華山や白馬三山を中心に、新雪に煌めく山並みは夏とは違う立体感があり圧倒されます。テルモス(保温ポッド)を傾けてコップに湯を注ぎ、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐる至福のひととき。けっして気を緩めてはいけませんが、天気のいい日に山で過ごす時間は癒しですね。