■名水を汲みにいこう
お茶の味は使う水で左右されるとの情報があったので、湧き水を汲みに。幸い日本各地にはおいしい水が豊富に湧き出しており、筆者の自宅から車で十数分の場所にも地元で有名な名水スポットとなっている神社がある。以前この水でインスタントコーヒーをつくって飲んでみたところ、あきらかに水道水の時と口当たりが違いおいしかった。
筆者が汲みに訪れた日は朝からけっこうな数の人たちが大量にポリ容器などを持ち込んで水を汲んでいた。
近所のスーパーで安い抹茶を購入したが、よさげなお菓子が見つからなかったので今回は省略。純粋にお茶の味だけを楽しむことにした。それにしても道具を集めたり、抹茶を買い求めたり、水を汲みに移動したり、なんだかお茶の世界はRPGのようだ。
■いよいよお茶を点てて実践
まず、道具を広げ、汲んできた名水でお湯を沸かすのだが、ここでキャンプギアのガスストーブとクッカーの出番だ。抹茶のパッケージの裏にお湯の分量の目安が書いてあるが、シェラカップがあれば水量を計ることも容易にできる。
●薄茶をシャカシャカしよう
茶道におけるお茶には薄茶と濃茶があるが、濃茶は相当濃厚なお茶で、それなりに高価な抹茶で作らねばならず、複数人で回し飲みする。一方、野点では薄茶が主流だ。名前のとおり薄く、おそらく多くの人が想像する「シャカシャカするほう」だ。
よい加減の量の抹茶を茶杓ですくって、自慢の器に入れよう。自作の茶杓では、山盛り1杯が2g。これに名水を沸かしたお湯100ccを茶碗に注ぎ入れ、小型金属ホイッパー(泡立て器)で一気呵成にかき混ぜる。
抹茶の粉の塊が残らないように均一に混ぜ、きめ細かくクリーミーに泡立てるのが理想だが、はたしてその味は。
■野点をやってみての感想
イメージ通りにクリーミーに泡立てることはできなかったが、丁寧に淹れたお茶を味わってみると、うまい。
安い抹茶だが香りもよく、一口ずつ大切に味わうと苦みの奥にほのかな甘みを感じる。ソロで野点をするなら、自分で自分をもてなす心遣いも大切だ。
自作した茶杓は、抹茶の細かい粒子が付着して取れなくなり、簡単に折れそうで不安になった。やはり先人の知恵にならって、材料は竹の方がよさそうだ。
●オシャレ感が高じて冷たい抹茶ラテも
牛乳があれば、抹茶ラテができる。見た目がオシャレで甘みなしの大人のラテだ。泡を立てるのはこちらのほうが簡単だし、夏ならば大量につくってゴクゴクいきたい。
■茶道はよく知らなくても、野点は誰でも自由に楽しめる
細かい作法を抜きにしてやってみたが、野点は案外簡単だった。どこでやってもいいし、自動車でやればそこが移動する茶室にもなる。普段なら絶対やらない「お茶を点てる」という経験は新鮮で、わずかだがいつものキャンプがワンランク上がったような気にもなる。
本格的にコーヒーを淹れて楽しんでいる人も、たまには気分を変えて野点でお茶を点ててみるのもよいだろう。
実際やってみると、茶筅とちょっといい茶碗がほしくなり、お茶の世界の「ギア沼」に引きずり込まれそうな予感がした。