12月に入り、寒さが急に厳しくなった。釣りをしたい気持ちはあるけれど、釣り物が少なく魚の活性も低いため、来春までしばらくお休みと決め込んでいる人も多いかもしれない。

 今回はそんな釣りファンに向けて、冬の管理釣り場でのタナゴ釣りを紹介したいと思う。タナゴ釣りはほぼ1年を通して楽しまれているが、冬は数釣りが楽しめるとあって愛好家の間ではベストシーズンといわれることもある。非常に小さなアタリをとらなければならず慣れるまでに少し時間が必要だが、コツさえつかめば初心者や子どもでも数釣りが楽しめるようになる。「世界最小の釣り物」といわれるタナゴ釣りの世界にあなたも足を踏み入れてみてはどうだろう。

■野田幸手園は初心者でも楽しめるサービスが充実

WakuWakuField 野田幸手園の事務所。ここで遊漁券を購入する

 今回、筆者が訪れたのは、千葉県野田市にある管理釣り場「WakuWakuField 野田幸手園(のださってえん・以下野田幸手園)。江戸川のほとりにある五駄沼(ごだぬま)を利用して作られたヘラブナの管理釣り場で、令和3年に新たにタナゴ釣り場が併設された。葦(アシ)で覆われた川幅1~2mの用水路でのんびりとタナゴ釣りが楽しめ、オープン以来人気を博している。

タナゴ釣り場の様子。水路の幅は1~2mほど

 都心から車で90分とアクセスがよく、1日の遊漁料金は1000円(半日は800円)ととてもリーズナブル。朝から終日タナゴ釣りを楽しむのもよし、ちょっと空いた時間に楽しむのにもぴったりの釣り場である。

 もし釣り方が分からない場合でも、事前に予約をしておけばスタッフからレクチャーが受けられるのでとても心強い。レンタルタックル(竿、仕掛け・予備のハリ付き、エサ、生かしビク(魚入れ)、折りたたみ椅子)も用意されているので、道具を持っていない人でも手軽にタナゴ釣りが楽しめる。

野田幸手園のレンタルタックル一式

 ほかにも、朝9時までに予約をしておけば、温かいお弁当を釣り座(釣りをしている場所)まで届けてくれる昼食サービスもあり、「お客様がワクワクする場所を提供したい!」という経営理念そのままのとても素晴らしい釣り施設である。

■釣れるタナゴは「タイリクバラタナゴ」

野田幸手園で釣れたオスのタイリクバラタナゴ

 現在、日本に生息するタナゴは外来種も含めて18種類近くいるとされているが、野田幸手園で釣れるタナゴはタイリクバラタナゴ(通称オカメ)という種類である。その名前のとおり中国から移入されたタナゴで、現在では日本全国で生息が確認されている。

 成魚の体長は5~8㎝ほど。食性は雑食性(藻類や小型の水生昆虫など)で、産卵期は3~9月頃とされている。産卵期のオスは体色が鮮やかな青と緑、ピンク色の婚姻色(こんいんしょく)に染まることで有名で、その綺麗な姿を一目見たいと釣りに訪れるアングラーも多い。

 また、他のタナゴ類と比べて口が小さいことでも知られ、ハリに掛けるのがとても難しく専用の極小ハリが販売されるほど。個体のサイズが小さいほど口も小さくなるので、ハリに掛けるのはより難しくなる。タナゴ釣りでは「一円玉サイズ(2cm)」という言葉をよく用いる。これはこのサイズのタナゴが釣れるようになれば、もう一人前だという証でもある。一般的な釣りなら大きいサイズが釣れた時に満足度が得られるものだが、タナゴ釣りにおいては小さければ小さいほど良いとされるのだ。

 ちなみに、野田幸手園では釣りあげたタナゴを持ち帰ることは禁止されている。魚が弱らないうちに元いた場所に優しくリリースしてあげよう。

タナゴ釣りの熟練者でも一円玉サイズを釣りあげるのは至難の業

■冬のタナゴ釣りの魅力はゲーム性の高さ

 タナゴは15~25℃程度の温かい水温を好む魚である。このため真夏を除いた春~秋にかけて活性が高く、もっとも釣りやすくなる。だとするとこれからの冬シーズンは釣りに向かないのでは!?  と思われるかも知れないが、実はそうでもないのである。

 水温が10℃以下に低下する冬場はタナゴの活性こそ低下するが、エサをまったく食べなくなる訳ではない。冬のタナゴは水温が少しでも高い場所、水温変化の少ない場所を求めて移動しながら群れをつくる傾向がある。つまり群れを見つけられれば、春~秋シーズン以上の数釣りが楽しめるのである。

 この時期のタナゴのアタリはとても小さく繊細なため、ハリ掛かりさせるのは難しい。このため腕の差が釣果となって現れ、ゲーム性が非常に高くなるのだ。これが冬のタナゴ釣りの魅力であり、寒い中でもみんなついつい通ってしまうのである。