夏は暑くて冬は寒い印象が強い京都だけれど、春は桜が艶やかで、秋は紅葉が素晴らしいのもまた、京都の魅力だ。盆地特有の寒暖の差が季節にメリハリを与え、ほがらかな陽ざしとピリッとした空気が、京の都をより美しくしているように感じる。
しかし、昨今の観光客の賑わいぶりには尻込みしそうになる。おだやかに過ごしたい神社仏閣やカフェが、静かに過ごせる聖域だとは限らなくなった。そんなとき、人の少ない落ち着いた京都を求めて、ぼくはランチとコーヒーを持って山に入る。
◼️️京都の市街地をとり囲む「京都一周トレイル」
京都市街地の東西と北を囲む山々は、全長約84kmの「京都一周トレイル」というハイキングコースで結ばれている。京都駅から見て南東にあたる伏見桃山から始まり、東の大文字山、北東の比叡山、北の鞍馬山、北西の高雄山と嵐山を経て、西にあたる西芳寺(苔寺)まで、ぐるりと山道がつながっているのだ。
道中には観光地としての名所がたくさんあり、歩きごたえもある。高い山を目指すのではなく、遠くまで歩きたいという欲求を満たしてくれて、トレイルを歩く楽しさにあふれているのだ。多くのハイカーから人気を集めるのもうなずける。
楽しみ方は多様。84kmを一気に歩き通す「スルーハイク」はハードルが高いけれど、いくつかの区間に分けて歩く「セクションハイク」なら誰でも挑戦しやすそう。これならコツコツ通うことになるから、しばらく京都を楽しみ続けられるだろう。
寄り道好きのぼくは、市街地に一度下りて、観光とセットにして歩くことが多い。山の上から町並みを眺めながら、手元の地図と照らし合わせるだけでも、町中の観光だけでは見えてこない京都の広さや魅力が再発見できる。周辺の山座同定の手立てにもなり、地図好きな人なら、これだけで何時間でも過ごせるだろう。